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会員の声

◎会員の声

「社会と繋がる」
                                  吉田 眞

■ 社会活動への参加

仕事中心の生活を卒業して時間が経ちますが、企業と大学でのICT(Information and Communication Technology)と教育の経験と、国内・外の友人・知己という財産によって、現在でも各種非営利法人の役員・顧問としてボランティアで社会と繋がった活動をしています。
主な活動は、組織運営や技術検討で職業人時代と大きくは変わりません。しかし、対人関係と価値観は、利益追求の企業時代とは違って(大学には似たような面もありますが)フラットな協働・交友関係であり、大変気楽に楽しんでいます。

個人的には山・街歩きが好きなので、数年前から某NPOの「歩きの会」でテーマを持った街・歴史散歩に参加しています。この会は自由度が高く、参加者の経歴や年齢は全くバラバラで、多様な交流ができることも気に入っています。
小生の専門は科学技術分野ですが、社会文化の分野にも昔から興味がありました。特に、国際協力活動が業務に含まれ、さらに管理・経営が業務となってからは、技術だけではなく人間要因と社会の視点を併せて実践するようになりました。 

■ 人間(個人)と社会

人間は社会的な動物であり、生まれるとまず親・家族と接します。成長するに従って、学校生活で級友・教師と接し、日常生活でご近所や商店など地域コミュニティの人々と接し、社会に出ると会社等で上司・同僚(その後に部下)及び組織と接します。
人間は、自分自身のこと(一つの事例という意味で“特殊性”)しか判りません。しかし、自分一人では生きていけず、社会(コミュニティ、自治体、国など)を機能させている共通的なもの(規則・慣習などのいわゆる“普遍性”)を受け入れる必要があります。人間は成長しながら随時、置かれた環境や局面に応じてこの両者の「折り合い」をつける必要があります。[1]
現代では、一人の人間が複数コミュニティに異なる人格で属することも普通です。さらに、コミュニティの性格の多様化[2]世界情勢の激動によって、個人と社会との「折り合い」をつける際の軋轢が大きくなっています。

■ 「折り合いの付け方」における問題

一つは、コミュニティ自体の閉鎖性です。
社会・コミュニティの普遍性は“内部での”普遍性・共通性なので、外部から見ると独自のしきたり・文化になります。ともすると、同じ価値観・規範の「ウチ」に閉じて「よそ者」を排除するようになります。そして、「ウチ」の論理を守らせる「タテ社会」を構成するようになります。コミュニティの継続的な発展には変化と多様性が必須ですが、これは閉鎖性と相反します。
これはいわゆる「ムラ社会」の問題です。日本の社会はこの典型ですが、興味深いのは、本来オープンであるネット社会においても、SNSによって「ムラ」ができ、他者が“見えなく(時には意図的に見なく)なる”、同じことが起きていることです。

二つ目は、コミュニティの性格との関係です。
コミュニティの分類の一つに「生産のコミュニティ」と「生活のコミュニティ」があります。[2]前者は職業生活に関係し、後者は私的個人生活に関係します。ところが、最近の科学技術、社会・経済の進展によって、この基本も変化しつつあります。情報化社会の急速な進展によって産業構造が劇的に変化し、現在では広い意味のサービス業が主体となっています。
表1 就労人口の割合[3]
2018年8月会報会員の声(表)

これにより、生産のコミュニティは従来の人間対機械・自然の意味を変えて、人間対人間の意味合いを含むようになり、生活のコミュニティとの重なりが進んでいきます。個人の属するコミュニティの数も増え「折り合いの付け方」もそれだけ必要となります。
                           2018年8月会報グローバリゼーション1

三つめは、グローバルと国家の関係です。
経済的な活動(“欲望”)は市民社会を基礎にして発展しました。これが、政治的な側面である国家(“思考”)の境界を超える場合、国際取引・貿易となりますが、グローバリズムとネットの発展とともに国の境界が希薄になる場面が増えています。一時は、あらゆる領域でグローバリズムが席巻するかに見えましたが、(反)移民、格差の拡大など様々な矛盾や問題によってナショナリズム(国家)との衝突が急激に顕著になっています。グローバル対ナショナルの関係の混乱は、経済、政治、社会などの局面で、今しばらくは続くと思われます。

「欲望」のためのではなく「足るを知る」経済活動、これに合った社会活動を基礎として、例えば江戸末期の訪日外国人が見たような生活[4]を参考にして、自己実現を目指すことが一つの考え方ではないでしょうか。

[1] 東浩紀:「ゲンロン0 観光客の哲学」、株式会社ゲンロン、2017年4月
[2] 広井良典:「コミュニティを問いなおす ― つながり・都市・日本社会の未来」、ちくま新書、2009年8月
[3] 厚生労働省:「産業構造」 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/13/dl/13-1-4_02.pdf
[4] 渡辺京一:「逝きし世の面影」、平凡社ライブラリー、2005年9月

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