欅の木3余白削除70 会員の声 - 欅友会
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会員の声

◎会員の声①





「東京経済大学・旧図書館」
                                       池田 広子
 
我が家の北側に面する道路にそって小金井市の方に向かい百メートル程歩くと、東京経済大学の図書館に通じる階段がある。雑木林の中は人に会うことも滅多になく、つい最近まで「まむしに注意!」の立看板があった。段差はそんなに高くないのだが、時々数えると、百段か百十段になる。何しろ、婆さんが息を切らして登っているので、正確に数えることが難しい。

                             2019年10月会報貫井神社2
近所住民の特権で、今までも時々利用していたが、退職後の時間を有効に使いたいと思い、朝九時に家を出て、野川沿いを歩き、途中の貫井神社に参詣して、家内安全を祈願し、心の安らぎを得た後、長い階段を登り図書館に着く。図書館建築のパイオニアと呼ばれた鬼頭梓氏による設計で1968年に完成した、天井の高い歴史ある建物だが、学生は殆どいない。私のように退職後の勉学の為、一生懸命調べものをしている人が何人か静かに座っている。持参した本を読んだり、棚の雑誌を読んだり、あっという間に昼になる。
2019年10月会報図書館1

一足早く退職した夫が多分家にいる。一日中、顔を突き合わせていると何となくイライラしてくる。お互い束縛しないようなるべく行動は別にしているが、時間が合えば食事を一緒にする。急ぎ帰宅し昼めしを食べ、しばし休憩して、また図書館へと向かい夕方まで過ごす。季節は七月、暑さを忘れるにはこの上なく好ましい場所だ。その快適さにどっぷりはまった。いつしか定席らしきものも決まり、一日中本に囲まれ学者か知識人にでもなった気分で最高に幸せだった。でも根が飽きっぽい性格なのか、一カ月もすると、何だか脳味噌がムズムズしてきた。

図書館で一日過ごす老人は絵にもならないし、身寄りのない婆さんと受付の人に思われるのも嫌だし、本もいいけどやっぱり人もいい。仕事人間だった私は趣味もない。何か身つけねばと「パステル画」と「エッセイ」の会に入会した。どちらも、ズブの素人で、全く経験がなかったが、女は度胸と愛嬌と図々しくも大きな顔をさらしている。

サークルに入会後は図書館に行く時間は減ったが相変わらず通っていた。ある日、棚にあるファイナンシャルプランナーの資格試験の参考書が目に止まり、ちょっと挑戦してみようかな、老人の頭を刺激してやろうと思った。それからが大変、簡易と思いきや意外と奥が深い。ひたすら覚えて、スピードが要求される。誰に言われた訳でもない、自分で決めたこと猛烈に勉強した。6か月後、必死の努力が実り合格証を手にした時は本当に嬉しかった。やれば出来る。これも図書館のおかげ、感謝、感謝である。

でも数年前、東京経済大学の図書館は新しく建てられ、古い図書館は講堂に変わった。新図書館へはたまに行くが、やっぱり高い天井の古い図書館が心落ち着き、懐かしさが込み上げてくる。                    
             2019年10月会報旧図書館2

(編集注)旧図書館は2014年に現在の「大倉喜八郎 進一層館(Forward Hall)」として生まれ変わりました。


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