欅の木3余白削除70 2/15 大久保 奈弥 先生 - 欅友会
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欅友会

学習会の要旨

◎2月の学習会の要旨
2020年3月会報大久保先生2

日 時: 2月15日(土) 13:30~15:30
会 場: 東京経済大学 2号館B301教室
テーマ: 「日本におけるサンゴ礁保全の現状」
講 師: 大久保 奈弥(おおくぼ なみ)先生
東京経済大学全学共通教育センター准教授
出席者:195名(会員:男性135名、女性56名、
非会員:男性1名、女性3名)


【講演要旨】

こんにちは、皆さんはサンゴというと沖縄のきれいな沢山のサンゴを思い浮かべると思いますが、実は江の島とか千葉にもいるんです。これは沖縄辺野古の写真ですが、こういったきれいなサンゴは沖縄とか奄美大島などにいるんですね。今日はここの話を中心にすすめて参ります。

【サンゴの研究】
                        2020年3月会報大久保先生潜水

学生の時はひたすら海に潜って、サンゴの移植でどう殖やしたら良いか色々研究していました。
運よく世界で初めて、移植したサンゴが卵を産むところを観察する事ができました。精子と卵が受精して、卵がどんどん割れていく卵割というところをずっと研究してきまして、新しい亜目(シズカテマリ亜目、ナミフウセン亜目)を提唱しました。生き物を分類するときには、界、門、綱、目、科、属、種 という、階層で分けるのですが、亜目は目と科の間に位置します。

【サンゴの経済価値と経済効果】
皆さんサンゴの価値はどの位だと思いますか。国連機関の報告によると、世界のサンゴ礁は300~1720億ドルの経済価値とされています。
経済効果では、八重山地域のサンゴ、サンゴ礁の経済効果で年間237億円あるといわれています。

【サンゴの生態】
2020年3月会報サンゴのふ化挿絵
           サンゴの生物学(生物科学67巻4号より)

日本では、サンゴの産卵は種によって1年に1回だけ、5月から6月、場所によっては7月から8月、同じ種類のサンゴが、同じ日の同じ時刻、同じ時に一斉に産むんです。
サンゴは雌雄異体や雌雄同体など色々あります。この写真は雌雄同体のサンゴでオスメス一緒、卵と精子が塊りになっています。ピンクの周りの白っぽいこれが精子、ピンクの塊が1個ずつの卵です。この塊が海面に到着するとバラバラに崩れます。
それが受精で、同じ種類の他のサンゴの卵と精子とが合体して受精が起こります。受精するとハート形のかわいい形になり、卵割が始まります。
2020年3月会報大久保先生サンゴ産卵 2020年3月会報大久保先生サンゴの卵と精子


               阿嘉島臨海研究所より

次の日の朝、赤潮のようにずっとサンゴの卵が流れていくのが見えます。時間とともに卵割が進み、細胞が小さな細長い形の幼生になって、プラヌラ幼生と言いますが、体の表面に生えた繊毛を使って泳ぎ出します。
この小っちゃい赤ちゃん達が繊毛を使って一生懸命泳ぐんです。もちろん、波の強さには勝てません。そして、海底の自分が好きな処にくっ付いて、そこで一生暮らします。くっ付くと変態がはじまります。幼虫からさなぎになったりするのと同じです。

この小さなプラヌラ幼生がお花のようなポリプに変態します。くっついて変態すると、もう一生そこに暮らさなければなりません。だから、サンゴの棲んでいる場所をサンゴの好きな環境にしておくことが大切です。そこを壊してしまうと、サンゴは逃げられないので、サンゴは死んじゃうしかない。
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この時期になると、または親からもらう場合もあるのですが、さんご礁を形成するサンゴは、植物プランクトンの一種である共生藻(褐虫藻とも呼ぶ)と一緒に暮らすようになります。褐虫藻はサンゴにご飯を作ってくれる大切なパートナー。この褐虫藻がサンゴの細胞内に共生するので、サンゴの見た目は藻類の色である茶色になっているものが多いです。
2020年3月会報サンゴの 2020年3月会報サンゴ礁


この小さなサンゴが成長してどんどん大きくなり、長い年月をかけて写真のようなさんご礁が形成されます。大浦湾のハマサンゴ、クマノミ城、アオサンゴの群体、とってもきれいです。
サンゴとさんご礁の違いですが、サンゴは生き物の名称、さんご礁は生物のことではなく地形の名称です。

【サンゴの現状】
2020年3月会報大久保先生サンゴの減少グラフ

沖縄のサンゴは今どうなっているか、壊滅的な状況です。
環境省が出しているサンゴの被度、量の変化ですが、1970年代高度成長の頃から、一気に10%以下に減ってしまっています。この時期に土地の改良、農地改良が進み、土が海にどんどん流れてしまって、沖縄は赤土が多く、細かい粒子の赤土がサンゴを被ってしまい、死んでしまいます。今はもっと減って半分以下になっています。人間の出した富栄養化の汚染水も海に流れ、オニヒトデが増殖し、サンゴを食べています。次の写真は沖縄の石西礁湖ですが、49.9%が白化しているという新聞の記事です。

【サンゴの白化】
                        2020年3月会報大久保先生サンゴの

白化とは褐虫藻がサンゴから失われる現象のことを言います。褐虫藻がサンゴの体内から失われると、光合成で作られたご飯が食べれなくなりサンゴは死んでしまいます。白化すると褐虫藻の茶色がなくなるので、サンゴ本来のきれいなブルーやピンクになっています。その後死亡すると、まっ白になる。温暖化で水温が高くなるストレスだけでなく、高知県の例では冷たすぎて白化しています。

【開発破壊】
石垣島の白保という、とてもきれいなアオサンゴ群集を有する場所の目の前にリゾートホテルが建設されそうになっており、訴訟になっています。サンゴはある程度きれいな水でないと生きられないので、目の前に約1万3千人利用を見込む大型リゾートホテルを建てると、ホテルが自前の濾過設備で汚水を処理するというのですが、明らかに海に負荷がかかる。観光客が出した汚染水が流れ込んだり、ビーチを踏み荒らしたりすると、砂浜に生息する生き物や海中のサンゴが一気に減少してしまいます。沖縄本島には開発業者がお金になる仕事が無くなって、石垣島などの島に進出してきて、ただお金儲けのためだけに観光化して、どんどん壊されています。

【サンゴとマイクロプラスチック(MP)】
マイクロプラスチック(MP)はサンゴの細胞の中に入って行くのを見つけました。
これがサンゴの赤ちゃんポリプです。周りにいる赤く見えるのが褐虫藻、きれいな蛍光緑、これがプラスチックで、これが入っていると共生藻が入らなくなる、これを見つけたんです。

1) 蛍光ビーズの実験
小さい褐虫藻がサンゴの体に入りやすいことを、蛍光ビーズを使って実験してくれないかと依頼があり、1ヶ月ほど呼ばれオーストラリアに行きました。蛍光ビーズをどうやって食べさせるか?餌とビーズでお団子を作ったら、うまく食べさせることができました。
ビーズのサイズを小中大の3サイズ用意し、餌と混ぜて食べさせたところ、小さいビーズほど多く組織の中に入っていて、大きいビーズはあまり入っていませんでした。また、ビーズがたくさん入ったイソギンチャクは褐虫藻が入りづらくなっていました。
ちゃんと組織の中に入っているのだろうか、共焦点レーザースキャン顕微鏡を使って確認していきました。共生藻の間に緑色の蛍光ビーズが入っていて、共生藻が入る同じ組織の場所に入っているのが確認できました。

2) マイクロプラスチック(MP)の実験
海に漂うマイクロプラスチック(MP)も入ってしまうのではないか、と思い実験しました。MPは食物連鎖といって、食べる食べられるの関係で上位層の大きいものに移動して行くのではないかと考え、エビを飼いました。蛍光ビーズを入れた水槽の中で飼うと、本当に見事に全部入ってしまう。蛍光ビーズの無いところで飼うと、エビは全部出しきって大丈夫になったんです。
イソギンチャクにこのエビをあげました。1~5匹に食べさせたところ、全身の細胞に見事に蛍光ビーズが入っていました。さらに、小さいものは出し易いかを詳しく観察し続けました。小さいものは、認識しないで取り込んで外に出さない、ずーっと細胞の中にたまっている。大きいものは異物と認識して、外に出しています。

3) マイクロプラスチック(MP)が共生藻を阻害
次に、MPを取り込ませた後に、サンゴに褐虫藻を与えると、一回食べ、吐き出している。なぜかというと体中がMPだらけになって入る場所がなく、褐虫藻を吐き出した。本来褐虫藻が入る場所にMPが入っていて、褐虫藻が入れなくなっているんです。
市販のMPでもやってみようとなり、市販の化粧品洗顔料に入っていたMPを与えてみました。1回は吐き出しますが、小さいのは食べたようです。MPを食べたイソギンチャクに褐虫藻を与えても、殆んど褐虫藻が入りません。大事な食事を与えてくれる褐虫藻が入れない、邪魔をしています。MPと褐虫藻が入る場所が一緒で、腸に当たる部分に藻類とMPが混在しているのが分り、MPを組織に取り込んでいました。

【サンゴの移植の失敗】
2020年3月会報サンゴの移植方法
            琉球新報

サンゴの移植は挿し木とか枝サンゴを折って植え付けるとサンゴは殖えます。小さいサンゴ、1個がぽつぽつのポチで、サンゴは自分のクローンを作って大きくしてゆき、どんどん大きくなる、これを利用して殖やしていこうとしました。赤ちゃんから、卵から、育てる。こうフラグに卵をくっ付けて育て、大きくなるまで育ててこれを海に出してやる。これも限界があって、勿論これだけでは殖えません。
NPO、NGO、沖縄県が一番移植をやっていますが、みんな失敗しています。

事例1)
JAMSTEC(海洋研究開発機構)はサンゴ資源確保として、大きな鉄塔に移植サンゴを植え付けて、サンゴの大きなお城を作り上げようとしましたが、大失敗でした。

事例2)
内閣府の交付金(沖縄特別振興対策調査費)で、2010年から2016年の間、総事業費10億円以上をかけてサンゴの移植を続けています。3haの海域に鉄柱を沈めて約9万本のサンゴを植え付けていました。9割以上が死亡し殖えていません。

事例3)
サンゴの研究者が関わる石西礁湖のサンゴ礁自然再生事業では、物凄いお金をかけて環境省がやっている。失敗しているが絶対言わない、いくら使っているかわからない、凄い失敗の事例です。

事例4)
マリンダイビング誌で「養殖サンゴもすくすく成長中 今年23億個の幼虫が旅立っていった」と喧伝、読んだ人は殖えているんだと思ってしまう。生まれても生き残るのはほんの数%なのにこういう風に書く。

事例5)
OIST(沖縄科学技術大学)の発表ですが、「養殖サンゴの大規模産卵を科学誌で発表し世界初で高く評価されている」そんな評価聞いたことも無いし、科学誌で発表といっても、写真を載せるコーナーです。研究者倫理を考えているのかと思うほど酷い。

事例6)
白化に強いサンゴを自分たちで作って植えよう。これはダメです。多様性がない。白化だけに強いスーパーコーラル、白化に強くても病気に弱いかもしれない。様々な環境で育つことができるような遺伝的多様性が必要なんです。

【開発の免罪符】
サンゴが破壊にさらされる埋立の一例、泡瀬干潟で98ha、那覇空港で160haのすごい面積です。
移植でどのくらい植えたか、ほんの3ha、しかも増えていない。ここに10億円以上使い、そのお金に乗かって企業があつまる。ウソをついて利用して、殖えないのに殖えますよと。

「世界」にも書きましたが、過剰表現は良くありません。マイナス面を正確に伝えねば。植えた後、毎日注意して見るメンテナンスも必要です。成長中のサンゴに色んな藻類が付いて死んじゃうんです。移植後のメンテにもお金がかかる、お金をどんどん使うんです。ですが、移植によってサンゴを殖やすのは不可能です。しかし、研究者はプラス面だけ宣伝、過剰宣伝している。
                        2020年3月会報辺野埋め立て1
                            辺野古の埋め立て

サンゴの移植が開発の免罪符に使われ、埋め立ても移植すれば大丈夫と間違った宣伝がされています。安倍首相が「日曜討論」で、「辺野古のサンゴは移しました」と言ったそうです。直ぐに私のところに、新聞社が尋ねてきてこんなことを言ってますと、言って来ました。ツイッターで、安倍首相の発言はウソですと書いたんですが、その日のリツイートランキング上位になっちゃった。
移しているから大丈夫だよはソモソモ間違いなんです。移した場所も違うところでした。そこに移したサンゴの1/3はすぐに死んだ、一年たたないうちに殆んど死んでしまいます。

サンゴはそこの場所、海の微妙な場所、微妙なバランスの中で生きている、だから移したらダメです。でも防衛省に雇われている研究者は「大丈夫」というのが今の状況です。
このような御用学者を批判する立場に私はいます。研究者に言えるのは私たち研究者だけです。

【御用学者に対して】
学会にも色々ありますが、小さな規模のサンゴ礁学会。そこに企業が入ってくる。先生たちをうまく利用したい企業、そこで談合ではないのですが、先生、先生と言って仲良くなる。仲良くなると批判できなくなる。そのような研究者は、開発に都合のいいことを公言するようになってしまいます。

その典型が沖縄防衛局「環境監視等委員会」で、御用学者の集まりです。
もともと国のストーリができ上がっていて、それにイエスしか言わない研究者が多い。研究実績が無くお金が貰えない、そんな人も入ってくる。

この環境監視等委員会の委員であるお茶大サンゴ研究者は、「ハマサンゴに関しては案外夏場でも移植可能なのではかと思います」と表明。研究者が「案外」だとか、「思います」の表現はダメです。しかし、この言葉で絶滅危惧種のサンゴが移植されてしまいました。

【サンゴをまもるには】
「サンゴ礁を守りましょう」という立場で記者会見していますが、移植では守れませんと言っています。サンゴを守るためには場所を守る、それを守ればお金を生み出せる経済効果があります。環境を守ることが一番大事なんです。
日弁連のシンポジウムで、「人間の手での再生は不可能」と言いました。人間の手で自然をコントロールしようというのは間違っています。だから、その場所を守る、守らなければならない。

プラスチック・ゴミだけでなく陸上からの汚染源を減らす、汚染を止めてきれいな水にしておけば、サンゴは勝手に殖えます。だから環境を守るんです。海を荒らしていってしまう。海にはいりますよね、そこで海の中でおしっこをすれば、海は富栄養化します。多くの人間が入れば水質が悪くなり、サンゴが死んでしまいます。そこに気をつけて、サンゴが住める環境を作っていく事です。
わたしは生物学者なので、経済・社会政策系の人たちと、わたしの実験結果からどういう問題があるのか探し出して、政策に結びつけることをしたいなと思っております。



【質疑応答】
2020年3月会報大久保先生講聴風景1

Q1:プラスチックをクレジットカード1枚分ぐらい食べていると仰ったが、どのくらいの期間。また、どんなふうに食べて入りますか。
A1:確か、1週間と思います。1ヶ月ではありません。エビとか筋肉は大丈夫でしょうが、食物連鎖によって、お魚の中にも入っています。お魚を食べてマイクロプラスチックを食事として食べていると思います。

Q2:現実的に移植はできない、効果がないことは分かりましたが、理論的にも不可能なのかですが。
A2:今の時点で将来への可能性は極めて低いと考えています。

Q3:海外ですが、移植など、どのような状況かお聞かせ願いたい。
A3:日本でやっていることを海外でも真似しはじめ、オーストラリアのグレートバリアリーフなどで政府が移植に物凄いお金をかけているので、研究者、業者が絡んだ日本と同じ状況になっています。

Q4:地球温暖化、白化とか、辺野古の状況など、どんどんサンゴにとって悪い環境になっている。サンゴを守るため環境保全それ以外のこと、いい場所を探すとか他にありますか。
A4:サンゴは環境が変わっても生き残ります。人間が生まれる前から生き続けてきたので、本来は何もしないで良いのです。今あるサンゴを我々が絶滅させてはならない、環境を守り、今あるサンゴを絶滅からまもる。温暖化は地球規模の問題でどうしようもないが、大きい意味でサンゴは環境が変わっても生き残っていくと考えています。
                                     (文責:川崎 守)
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