欅の木3余白削除70 4/6 山田誠二 先生 - 欅友会
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学習会の要旨

◎4月6日学習会の要旨                                    

日 時:4月6日(土) 13:30~15:30
会 場:東京経済大学  2号館B301教室
テーマ:「人工知能AIの現状、社会への影響、そしてどう付き
     合うか」 
講 師:山田 誠二 先生 (国立情報学研究所教授)
出席者:261名(会員:男性183名、女性67名        
         非会員:男性8名、女性3名)
2019年5月会報山田先生3


【講演要旨】
ガートナーというアメリカのコンサル調査会社の日本の支社で、毎年IT関係でどういうものが流行り言葉として、波のどの辺に乗っかているのかをプロットしたものを発表している。インターネットやスマートホンはユーザーの数が多くて、生産性の安定期にある。人工知能は今、ピークを少し過ぎているが、2年前はピークにあった。AIよりもっと先に落ちているのはIoTとインターネット。谷底に落ちているのがビッグデータだ。人工知能は世間的にはまだまだ期待が高い。

1.人工知能AIとは何か

                             2019年5月会報AIの4

人工知能(Artificial Intelligence)は知能を人工的につくったものである。もっと細かく定義していくと、研究者によってちょとずつ定義が違う。よく使われる定義として「人間並みの知的な処理をコンピューター上に実現したもの」がある。この定義の中に2つぐらい定義されていない言葉が入っている。それは人間並みのと知的な処理ということだ。どれだけできれば人間並みかは、判断が難しい。知的な処理はどういうものを言うのかも難しい。また、コンピューター上と言うのはコンピューターのプログラムとして作り上げるという意味だ。

AIと言う言葉が最初に使われたのは、1956年のアメリカで開催されたダートマス会議でのことだ。今から60年前のことだ。60年前にはインターネットは微塵もなかった。当時、コンピューターはIBMの大型コンピューターの時代であった。その頃からAIの研究が始まった。大体60年研究・開発されると、やれることはできて、実用で使えるレベルに達して、研究するものはなくなるものだが、人工知能については、できることがまだできていないし、一部分しかできていない。
2019年5月会報大型コンピュータ1

歴史的には、強いAIの研究から、だんだん弱いAIに移って来ている。ところが、最近一部に、強いAIの復権が見られる。それが汎用人工知能AGIだ。シンギュラリティ(技術的特異点)と言う言葉が新聞などに出ているが、簡単に言えば2045年に人間を超えるAIが出現し、人間の仕事を全て奪い、人間は必要がなくなり、AIが人間を支配し、人間は奴隷になると言うことだ。私には考えられないし、噴飯ものだと思う。しかし、ビジネスサイドには信じている方が結構いる。 

2.AIのブーム(周期)

流行は20年周期で繰り返すと言われているが、人工知能は60周年で、3回のブームがあった。現在はその3回目であり、ちょっと落ち着いてきているが、まだ続いている。

第1次ブーム、第2次ブーム、第3次ブームを言葉で特徴づけると、第1次ブームは1960年代より少し前にニューラルネットワークの一番元のパーセプトロンができていた。第2次ブームは1980年代に起こり日本は頑張った。日本のコンピューターメーカーの若手の優秀な研究者を当時の通産省が引っ張っていた国家プロジェクトの新世代コンピューター開発機構に出向させていた。日本は世界的に研究でもリードしていた。その時、記号処理、エキスパートシステムが開発された。

特に多くのエキスパートシステムは医者の診断用に開発されたが、医者の診断には論理が一部飛躍していることが分かった。それは「暗黙知」で知っているかも分からないし、口で説明できないものだ。これが大事なもので、膨大な量があることが分かった。人間はやっていることの95%は無意識でやっているとよく言われる。結局これが壁になってできないということもあり、第2次AIブームは去っていった。80年代には企業はAI研究所をたくさんつくったが、冬の時代になると名前を変え、90年代後半になるとなくなり,大体がマルチメディア研究所などの名前に変えた。

今、第3次ブームが始まり、AI研究所が増えている。トヨタがアメリカにつくり,リクルートやドワンゴもつくった。第3次はディープラーニングと大手IT企業の応用が進んだことが大きい。
                              2019年5月会報ビッグデータ1

ビッグデータ(気象データ、Suica等)+計算機(高速、廉価)が揃うと機械学習に使え、応用ができ、第3次ブームに繋がった。機械学習がポイントだと理解して帰っていただきたい。機械学習はコンピューターに学習をさせることだ。学習にもいろいろあり、多分百種類ぐらいもある。

教師あり学習は、答えを教えてくれる先生がいる学習であり、分類学習は分類する問題を段々学習していくことだ。分類学習は、例えば駐車場に怪しい人が来た時にだけ警告音を出して教えてくれるものだ。画像を見て怪しい人が写っているか、いないかを分類するし、内視鏡の画像を見てポリープが写っているか、いないかをも画像の分類学習だ。犬、猫の画像の分類は50枚、50枚のそれぞれの写真を使い、教師が教えると、あとはAIが自分でどこが違うのかを自分で考える、ここが機械学習だ。ここで教師あり分類学習をする。AIは関数を使って考える。

ニューラルネットワークは神経回路網のことだ。脳の中の神経回路網、ネットワークのことだ。脳の中には神経細胞が10億から何10億個あると言われていて、生まれてから減り続けると言われている。
ニューラルネットワークはある種の重みを変えることによりある種の学習をする(数字に比例した電流が流れる)
2019年5月会報ディープラーニング1

ディープラーニングは層(layer)が5つ以上のものを言う。一番使われているのは40年前NHK技研の福島先生が作ったものだ。ディープラーニングの成功例としてAlphaGoがある。2年前、韓国人の世界チャンピオンに勝った。チェス、将棋、碁と言ったゲームはAIが強い。思ったより10年早くAIが碁で勝てた。

3.AIの得意/不得意分野

AIができないものを中心に話をしていくが、先ずAIの得意分野は複雑だが静的(static)で閉じた
(closed)世界だ。例として、ゲーム(チェス等)、室内環境、サイバー空間で行われるもの。

不得意分野は動的(dynamic)で開いた(open)世界、常識を必要とするもの。
AIに言ってはいけない言葉を教えるのは不可能だ(ハラスメントに結び付く言葉)。

欧米ではAIを騙す研究があり、ディープラーニングは人間と違った画像認識をすることがある。例:
ウミガメの模型を見てライフル銃と誤認。

AI研究者の間では車のレベル5(完全自動)の自動走行は先ず不可能だとの認識が拡がっている。2016年アメリカのハイウェイでテスラの自動走行中の車が衝突事故発生。事故を完全に防止できるプログラムを書けなかったと言うことだ。日本のような狭い道ではなおさらだ。日本では50mぐらいを走らせて成功と言っているのが見られる。

4.AIで変わる社会

有望な応用分野として賢い情報検索と高度なパターン認識がある。賢い情報検索はヘルプデスクであり、パターン認識の方は特に医療分野(ヘルスケア)で利用されているCT画像、Ⅹ線画像の分類、健康相談がある。今、内視鏡メーカーが開発を進めている。また、確定申告をAIでやるとか、ポートフォリオに使うとか、意思決定に関わるものに徐々に進んでいくと考えられる。
RPA(Robotic Process Automation)は請求書が来たら、どこの会社から来たのか、金額がいくらで、それをどのお金で払うべきかを判定して、それに対応した返信のメールを書くと言う一連の作業を、人間の代わりにやることができる。
                                 2019年5月会報IOTの1

IoTは多数のセンサーを付けてデータを取ろうという発想で、その使い道を考えていないことが多い。一方、AIは使い方ばかり考えて、データを取ることを考えていない。だから、この二つは相性が良くて補い合う。IoTからデータを取ってきてAIで処理するべきだし、そうなると思うが、まだ、そんなに進んでいない。

5.AIと人間の労働

AIが日本の労働力不足を救うという話で、AIによって人間の仕事の49%が奪われるというオックスフォード大学と野村総研のレポートがあったが、これについてふれる。日本の総人口は2007~2008年辺りがピークでそこから下がっているし、生産年齢人口は1995年ぐらいがピークで、そこから下がって来ている。このまま下がり続けると、30年後には1億は切ってしまい8000万人と言われている。

人口不足を補うのは二つの方法しかないと政府関係者は言っている。一つは外国人労働者を受け入れること。もう一つはAIにやってもらうことだ。私は49%の仕事がなくなることはあり得ないと思う。野村総研でこの仕事に携わった人もそれを認めていた。一人の仕事が丸ごとなくなることはないが、一部の仕事がAIに取って替わられることはありうる。
単純作業やルーチンワークはAIができる。これからは労働をAIで代替可能かという新しい分類基準を考えないといけない。

オックスフォードと野村総研のレポートで言うと、クリエイティブな仕事はなくなりにくいとなっている。クリエイティブな仕事と言うのは企画ベースの仕事だ。しかし、私見ではクリエイティブな仕事からなくなることになる。何故ならば、次の本に答えが書かれている。『アイデアのつくり方』と言う薄い本があり、30分で読むことができる。この中にこう言うことが書かれている。「新しいアイデアはない。新しく見えるアイデイアは実は既存のアイデアの組み合わせにしか過ぎない」。これはいろいろな所で言われている。

歌謡曲でもロックでもそうだ。ある規則に沿った組み合わせだけを作っている。その中で良いものだけを見つければいいことになる。0から新しいものが生まれることは殆どない。換言すれば、良い組み合わせを探せばいいということになる。この仕事はAIが最も得意とするところだが、組み合わせが良いのか、悪いのかを判断できるのは人間だけだ。だから、最終的には人間が評価をするか、人間がどう評価しているかという評価関数をAIに組み込んでやるかだ。

一部しかできない例としてよく出るのが、コンビニの店員の例だ。コンビニの店員はレジ打ちだけをやっているわけではない。20種類ぐらいの仕事がある。この中で、AIやロボットではできそうもない仕事がいくつもある。その典型が“おでん”だ。いろいろな材料を入れるが、大きさ、柔らかさ、硬さの違うものを上手に入れる。これをAIやロボットはできない。もう一つは掃除だ。床、トイレ、駐車場。みんな掃除しないといけない。ルンバと言う掃除ロボットはトイレでは動かないし、駐車場では車に轢かれてしまうだろう。
アマゾンの倉庫業務はほぼ完全自動化されているが、一部だけできないものがある。それは棚の中からものを取り出し箱に入れることだ。これは、今、人間にしかできない。
2019年5月会報AIの3

6.まとめ

仕事の一部はAIがやるが、残りは人間がやる。一緒に働くしかないし、それが自然になる。すでにそれは行われている。例①アメリカの工場で目が付いているロボットと男の人が一緒に仕事をしている。②二人の女の人がチエス盤に向かい合っている。人間とAIがチームとなって戦っている。このデモは、アドバンストチエスとかフリースタイルチエスと言われているもので、チエスの世界で流行っているものだ。これがまさに我々が理想とするAIと人間の付き合い方だ。③女の人が画面に登場し、福島県若松城の日帰りのお城ツアーの宣伝をしている。人間の代わりにやっている。うまくやっていくためには、人間とAIがお互いに理解し合わないといけない。これはAIが人間をよく理解して、人間のモデルでもって、うまくそれを利用している例だ。

                  2019年5月会報山田先生講聴風景1

[質疑応答]

Q1:日本のAIの進歩が遅く、米国と中国が進んでいる。この先、日本はAIとIoTをどう展開すればいいか。
A1:論文の数では中国がアメリカを抜きつつある。AIで日本が強い研究分野はいくつもあり、自然言語処理、ロボット関係は強い。世界のいろいろな先端ロボットの多くは日本で作られている。少し古いがホンダのASIMO。それから、機械翻訳も強いし、コンピュータービジョン関係もかなり強い。
中国やアメリカが強い分野は機械学習を中心にして進んでいる。中国やアメリカは、データがビッグデータがある方が上手くいくという発想だが、日本はデータが少なくてもある程度上手くいくという考えで、今頑張っている。機械学習については、そこら辺で活路が見出せるのではないか。理論的なことを研究している機械学習の研究者もたくさんいるので、挽回の希望があると思う。

Q2:ロボット、AIもそうかもしれないが、外見は人間に近づかない方が、人間と仲良くなれると思うが如何か、近づくと近親憎悪的に嫌な奴になるのでは。どう思われるか。
A2:私も、私のグループも同じ考え方だ。ロボットの何を人間に近づけるかが問題だ。注目しているのは外見だ。外見が人間に近い方がいいか、ロボットはロボットらしい方がいいか。我々の研究で人間に近い外見をロボットが持つと、人間と同じ能力を持っていると思い込んでしまう。人間と同じ能力を持つのは無理なので、「人間並みだ、こいつすごいな」と思って接すると、ロボットを継続して使用する気をなくさせ、失望してしまうことになるのでよくない。このことは実験的にも証明している。おっしゃる通りだ。

Q3:日本は1万円のものを買う時、1万円札を出すのが普通だが、外国はデジタル化し、どんどん変わって来ている。この辺の見通しは如何か。
A3:キャッシュレスが中国で普及するのは、諸説あるが、一つには贋金が多い。現金が信用できないところがあって、キャッシュレスにならざるを得ない。日本に偽札はめったにないし、あとはクレジットカードに代替できるかどうかだ。個人的にクレジットカードと交通系のスイカで満足している。それを中国のようにするインセンティブがないように思う。但し、私の専門ではない。  
                                                     (文責:中村俊雄)



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