欅の木3余白削除70 5月会報(2019年) - 欅友会
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5月会報(2019年)

   
      
                          2019年5月会報バラ5
     
     
    
                                                                                                                      
 5月会報(2019年)                                     





「お知らせ」

①「会員懇親会のご案内」
☆会員の交流の場です。誘い合わせてご出席ください。
                                  2019年5月会報管弦楽団1

日 時:5月25日(土) 学習会終了後15時50分頃より
会 場: 葵陵会館内 大学食堂(TERIA)
会 費:3,000円    

◆東京経済大学からは後藤理事長、岡本学長、米山教授、岡田総合企画部長、
国分寺市からは井澤市長、古屋教育長、千葉社会教育課長など、日ごろお世話になって
いる方々が出席される予定です。
◆当日は軽食と飲み物を用意しております。
◆東京経済大学管弦楽団による演奏と、会員の彌吉 久さんによる尺八演奏があります。

◎5月15日(水)までに、下記にお申し込みください。
お問い合わせ:川﨑 守 
<5月18日(土)までのキャンセルは返金に応じます。>




②5月の学習会のお知らせ                                    

日 時:5月25日(土) 13:30~15:30            
会 場:東京経済大学 2号館 B301教室                                 
テーマ:「画像で読み解く保険の歴史」              
講 師:米山 高生(よねやま たかう)先生 (東京経済大学 経営学部教授)
2019年5月会報米山先生

(講師のプロフィール) 
1953年生まれ。信州大学人文学部経済学科卒業。横浜国立大学大学院経済学研究科 修士課程修了。一橋大学大学院経済学研究科 博士後期課程単位取得満期退学。2000年から一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年から現職。一橋大学名誉教授。著書に『リスクと保険の基礎理論』(同文館出版社2012年)、『物語(エピソード)で読み解くリスクと保険入門』(日本経済新聞社2008年)ほか。生活経済学会会長、日本保険・年金リスク学会会長、経営史学会監事、総務省情報通信審議会委員、金融庁金融行政モニター委員も務める。日本郵政公社総裁表彰、簡易保険文化財団創立十周年記念優秀研究賞受賞。



③6月の学習会のお知らせ  
※学習会開催日までに会報6月号が届かない場合を想定して、今月号でご案内します。

日 時:6月8日(土) 13:30~15:30                             
会 場:東京経済大学 2号館 B301教室                                 
テーマ:「福祉コミュニティと災害―要援護者を地域で支えるしくみ」             
講 師:尾崎 寛直(おざき ひろなお)先生(東京経済大学 経済学部准教授)
2019年5月会報尾崎先生

(講師のプロフィール)
1975年生まれ。東京農工大学農学部卒業。2001年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得。2004年東京経済大学に着任、2008年同大学准教授。専門は環境政策、環境福祉論、コミュニティ福祉論。公害を経験した各地の環境再生の研究プロジェクトに関わる。
著書に『放射能汚染はなぜくりかえされるのか』(東信堂2018年)、『「環境を守る」とはどういうことか―環境思想入門』(岩波書店2016年)、共編書に「岐路に立つ震災復興―地域の再生か消滅か」(東京大学出版会2016年)など。





◎4月6日学習会の要旨                                    

日 時:4月6日(土) 13:30~15:30
会 場:東京経済大学  2号館B301教室
テーマ:「人工知能AIの現状、社会への影響、そしてどう付き
     合うか」 
講 師:山田 誠二 先生 (国立情報学研究所教授)
出席者:261名(会員:男性183名、女性67名        
         非会員:男性8名、女性3名)
2019年5月会報山田先生3


【講演要旨】
ガートナーというアメリカのコンサル調査会社の日本の支社で、毎年IT関係でどういうものが流行り言葉として、波のどの辺に乗っかているのかをプロットしたものを発表している。インターネットやスマートホンはユーザーの数が多くて、生産性の安定期にある。人工知能は今、ピークを少し過ぎているが、2年前はピークにあった。AIよりもっと先に落ちているのはIoTとインターネット。谷底に落ちているのがビッグデータだ。人工知能は世間的にはまだまだ期待が高い。

1.人工知能AIとは何か

                             2019年5月会報AIの4

人工知能(Artificial Intelligence)は知能を人工的につくったものである。もっと細かく定義していくと、研究者によってちょとずつ定義が違う。よく使われる定義として「人間並みの知的な処理をコンピューター上に実現したもの」がある。この定義の中に2つぐらい定義されていない言葉が入っている。それは人間並みのと知的な処理ということだ。どれだけできれば人間並みかは、判断が難しい。知的な処理はどういうものを言うのかも難しい。また、コンピューター上と言うのはコンピューターのプログラムとして作り上げるという意味だ。

AIと言う言葉が最初に使われたのは、1956年のアメリカで開催されたダートマス会議でのことだ。今から60年前のことだ。60年前にはインターネットは微塵もなかった。当時、コンピューターはIBMの大型コンピューターの時代であった。その頃からAIの研究が始まった。大体60年研究・開発されると、やれることはできて、実用で使えるレベルに達して、研究するものはなくなるものだが、人工知能については、できることがまだできていないし、一部分しかできていない。
2019年5月会報大型コンピュータ1

歴史的には、強いAIの研究から、だんだん弱いAIに移って来ている。ところが、最近一部に、強いAIの復権が見られる。それが汎用人工知能AGIだ。シンギュラリティ(技術的特異点)と言う言葉が新聞などに出ているが、簡単に言えば2045年に人間を超えるAIが出現し、人間の仕事を全て奪い、人間は必要がなくなり、AIが人間を支配し、人間は奴隷になると言うことだ。私には考えられないし、噴飯ものだと思う。しかし、ビジネスサイドには信じている方が結構いる。 

2.AIのブーム(周期)

流行は20年周期で繰り返すと言われているが、人工知能は60周年で、3回のブームがあった。現在はその3回目であり、ちょっと落ち着いてきているが、まだ続いている。

第1次ブーム、第2次ブーム、第3次ブームを言葉で特徴づけると、第1次ブームは1960年代より少し前にニューラルネットワークの一番元のパーセプトロンができていた。第2次ブームは1980年代に起こり日本は頑張った。日本のコンピューターメーカーの若手の優秀な研究者を当時の通産省が引っ張っていた国家プロジェクトの新世代コンピューター開発機構に出向させていた。日本は世界的に研究でもリードしていた。その時、記号処理、エキスパートシステムが開発された。

特に多くのエキスパートシステムは医者の診断用に開発されたが、医者の診断には論理が一部飛躍していることが分かった。それは「暗黙知」で知っているかも分からないし、口で説明できないものだ。これが大事なもので、膨大な量があることが分かった。人間はやっていることの95%は無意識でやっているとよく言われる。結局これが壁になってできないということもあり、第2次AIブームは去っていった。80年代には企業はAI研究所をたくさんつくったが、冬の時代になると名前を変え、90年代後半になるとなくなり,大体がマルチメディア研究所などの名前に変えた。

今、第3次ブームが始まり、AI研究所が増えている。トヨタがアメリカにつくり,リクルートやドワンゴもつくった。第3次はディープラーニングと大手IT企業の応用が進んだことが大きい。
                              2019年5月会報ビッグデータ1

ビッグデータ(気象データ、Suica等)+計算機(高速、廉価)が揃うと機械学習に使え、応用ができ、第3次ブームに繋がった。機械学習がポイントだと理解して帰っていただきたい。機械学習はコンピューターに学習をさせることだ。学習にもいろいろあり、多分百種類ぐらいもある。

教師あり学習は、答えを教えてくれる先生がいる学習であり、分類学習は分類する問題を段々学習していくことだ。分類学習は、例えば駐車場に怪しい人が来た時にだけ警告音を出して教えてくれるものだ。画像を見て怪しい人が写っているか、いないかを分類するし、内視鏡の画像を見てポリープが写っているか、いないかをも画像の分類学習だ。犬、猫の画像の分類は50枚、50枚のそれぞれの写真を使い、教師が教えると、あとはAIが自分でどこが違うのかを自分で考える、ここが機械学習だ。ここで教師あり分類学習をする。AIは関数を使って考える。

ニューラルネットワークは神経回路網のことだ。脳の中の神経回路網、ネットワークのことだ。脳の中には神経細胞が10億から何10億個あると言われていて、生まれてから減り続けると言われている。
ニューラルネットワークはある種の重みを変えることによりある種の学習をする(数字に比例した電流が流れる)
2019年5月会報ディープラーニング1

ディープラーニングは層(layer)が5つ以上のものを言う。一番使われているのは40年前NHK技研の福島先生が作ったものだ。ディープラーニングの成功例としてAlphaGoがある。2年前、韓国人の世界チャンピオンに勝った。チェス、将棋、碁と言ったゲームはAIが強い。思ったより10年早くAIが碁で勝てた。

3.AIの得意/不得意分野

AIができないものを中心に話をしていくが、先ずAIの得意分野は複雑だが静的(static)で閉じた
(closed)世界だ。例として、ゲーム(チェス等)、室内環境、サイバー空間で行われるもの。

不得意分野は動的(dynamic)で開いた(open)世界、常識を必要とするもの。
AIに言ってはいけない言葉を教えるのは不可能だ(ハラスメントに結び付く言葉)。

欧米ではAIを騙す研究があり、ディープラーニングは人間と違った画像認識をすることがある。例:
ウミガメの模型を見てライフル銃と誤認。

AI研究者の間では車のレベル5(完全自動)の自動走行は先ず不可能だとの認識が拡がっている。2016年アメリカのハイウェイでテスラの自動走行中の車が衝突事故発生。事故を完全に防止できるプログラムを書けなかったと言うことだ。日本のような狭い道ではなおさらだ。日本では50mぐらいを走らせて成功と言っているのが見られる。

4.AIで変わる社会

有望な応用分野として賢い情報検索と高度なパターン認識がある。賢い情報検索はヘルプデスクであり、パターン認識の方は特に医療分野(ヘルスケア)で利用されているCT画像、Ⅹ線画像の分類、健康相談がある。今、内視鏡メーカーが開発を進めている。また、確定申告をAIでやるとか、ポートフォリオに使うとか、意思決定に関わるものに徐々に進んでいくと考えられる。
RPA(Robotic Process Automation)は請求書が来たら、どこの会社から来たのか、金額がいくらで、それをどのお金で払うべきかを判定して、それに対応した返信のメールを書くと言う一連の作業を、人間の代わりにやることができる。
                                 2019年5月会報IOTの1

IoTは多数のセンサーを付けてデータを取ろうという発想で、その使い道を考えていないことが多い。一方、AIは使い方ばかり考えて、データを取ることを考えていない。だから、この二つは相性が良くて補い合う。IoTからデータを取ってきてAIで処理するべきだし、そうなると思うが、まだ、そんなに進んでいない。

5.AIと人間の労働

AIが日本の労働力不足を救うという話で、AIによって人間の仕事の49%が奪われるというオックスフォード大学と野村総研のレポートがあったが、これについてふれる。日本の総人口は2007~2008年辺りがピークでそこから下がっているし、生産年齢人口は1995年ぐらいがピークで、そこから下がって来ている。このまま下がり続けると、30年後には1億は切ってしまい8000万人と言われている。

人口不足を補うのは二つの方法しかないと政府関係者は言っている。一つは外国人労働者を受け入れること。もう一つはAIにやってもらうことだ。私は49%の仕事がなくなることはあり得ないと思う。野村総研でこの仕事に携わった人もそれを認めていた。一人の仕事が丸ごとなくなることはないが、一部の仕事がAIに取って替わられることはありうる。
単純作業やルーチンワークはAIができる。これからは労働をAIで代替可能かという新しい分類基準を考えないといけない。

オックスフォードと野村総研のレポートで言うと、クリエイティブな仕事はなくなりにくいとなっている。クリエイティブな仕事と言うのは企画ベースの仕事だ。しかし、私見ではクリエイティブな仕事からなくなることになる。何故ならば、次の本に答えが書かれている。『アイデアのつくり方』と言う薄い本があり、30分で読むことができる。この中にこう言うことが書かれている。「新しいアイデアはない。新しく見えるアイデイアは実は既存のアイデアの組み合わせにしか過ぎない」。これはいろいろな所で言われている。

歌謡曲でもロックでもそうだ。ある規則に沿った組み合わせだけを作っている。その中で良いものだけを見つければいいことになる。0から新しいものが生まれることは殆どない。換言すれば、良い組み合わせを探せばいいということになる。この仕事はAIが最も得意とするところだが、組み合わせが良いのか、悪いのかを判断できるのは人間だけだ。だから、最終的には人間が評価をするか、人間がどう評価しているかという評価関数をAIに組み込んでやるかだ。

一部しかできない例としてよく出るのが、コンビニの店員の例だ。コンビニの店員はレジ打ちだけをやっているわけではない。20種類ぐらいの仕事がある。この中で、AIやロボットではできそうもない仕事がいくつもある。その典型が“おでん”だ。いろいろな材料を入れるが、大きさ、柔らかさ、硬さの違うものを上手に入れる。これをAIやロボットはできない。もう一つは掃除だ。床、トイレ、駐車場。みんな掃除しないといけない。ルンバと言う掃除ロボットはトイレでは動かないし、駐車場では車に轢かれてしまうだろう。
アマゾンの倉庫業務はほぼ完全自動化されているが、一部だけできないものがある。それは棚の中からものを取り出し箱に入れることだ。これは、今、人間にしかできない。
2019年5月会報AIの3

6.まとめ

仕事の一部はAIがやるが、残りは人間がやる。一緒に働くしかないし、それが自然になる。すでにそれは行われている。例①アメリカの工場で目が付いているロボットと男の人が一緒に仕事をしている。②二人の女の人がチエス盤に向かい合っている。人間とAIがチームとなって戦っている。このデモは、アドバンストチエスとかフリースタイルチエスと言われているもので、チエスの世界で流行っているものだ。これがまさに我々が理想とするAIと人間の付き合い方だ。③女の人が画面に登場し、福島県若松城の日帰りのお城ツアーの宣伝をしている。人間の代わりにやっている。うまくやっていくためには、人間とAIがお互いに理解し合わないといけない。これはAIが人間をよく理解して、人間のモデルでもって、うまくそれを利用している例だ。

                  2019年5月会報山田先生講聴風景1

[質疑応答]

Q1:日本のAIの進歩が遅く、米国と中国が進んでいる。この先、日本はAIとIoTをどう展開すればいいか。
A1:論文の数では中国がアメリカを抜きつつある。AIで日本が強い研究分野はいくつもあり、自然言語処理、ロボット関係は強い。世界のいろいろな先端ロボットの多くは日本で作られている。少し古いがホンダのASIMO。それから、機械翻訳も強いし、コンピュータービジョン関係もかなり強い。
中国やアメリカが強い分野は機械学習を中心にして進んでいる。中国やアメリカは、データがビッグデータがある方が上手くいくという発想だが、日本はデータが少なくてもある程度上手くいくという考えで、今頑張っている。機械学習については、そこら辺で活路が見出せるのではないか。理論的なことを研究している機械学習の研究者もたくさんいるので、挽回の希望があると思う。

Q2:ロボット、AIもそうかもしれないが、外見は人間に近づかない方が、人間と仲良くなれると思うが如何か、近づくと近親憎悪的に嫌な奴になるのでは。どう思われるか。
A2:私も、私のグループも同じ考え方だ。ロボットの何を人間に近づけるかが問題だ。注目しているのは外見だ。外見が人間に近い方がいいか、ロボットはロボットらしい方がいいか。我々の研究で人間に近い外見をロボットが持つと、人間と同じ能力を持っていると思い込んでしまう。人間と同じ能力を持つのは無理なので、「人間並みだ、こいつすごいな」と思って接すると、ロボットを継続して使用する気をなくさせ、失望してしまうことになるのでよくない。このことは実験的にも証明している。おっしゃる通りだ。

Q3:日本は1万円のものを買う時、1万円札を出すのが普通だが、外国はデジタル化し、どんどん変わって来ている。この辺の見通しは如何か。
A3:キャッシュレスが中国で普及するのは、諸説あるが、一つには贋金が多い。現金が信用できないところがあって、キャッシュレスにならざるを得ない。日本に偽札はめったにないし、あとはクレジットカードに代替できるかどうかだ。個人的にクレジットカードと交通系のスイカで満足している。それを中国のようにするインセンティブがないように思う。但し、私の専門ではない。  
                                                     (文責:中村俊雄)







◎4月13日学習会の要旨                                    

日 時:4月13日(土) 13:30~15:30
会 場:東京経済大学 2号館B301教室 
テーマ:「習近平の目指す中国とは」 
講 師:川島 真 先生 
(東京大学大学院綜合文化研究科教授)
出席者:268名(会員:男性192名、女性56名        
         非会員:男性12名、女性8名) 
2019年5月会報川島真先生1


【講演要旨】

1.中国は社会主義国である

(1)中国は共産主義国でなく社会主義国である
                             2019年5月会報中国1

・生産物や生産手段を誰かが均等にしないといけないのが社会主義で、何もしなくても自ずと平等になるのが共産主義である。中国共産党は現在の社会主義を共産主義国家にすることを使命としている。

・現在は資本主義から社会主義へ進む過渡期である。資本主義は未だ行き詰まっていないので、資本主義的要素を取り入れても良いとの中国の認識。

・中国が目指す社会主義はマルクス・レーニンが唱えた社会主義ではなく、マルクス思想を毛沢東思想に基づく独自の思想で解釈した、中国的特色のある社会主義を実践している。

・最近、中国の大学生の中で「マルクス・レーニンin中華」を組織し、マルクス・レーニンの唱える本来の社会主義を正しく学んで、中国は社会主義国なのに工場労働者はどうしてこんな酷い目に遭うんだと言って、中国の労働者をもっと解放すべきだとの運動を北京大学の学生が起こしている。政府は弾圧したいが社会主義とは何かという社会問題になるので、今のところ静観している。

(2)中国の路線対立(1949年の建国当初から始まる)と改革開放

2019年5月会報改革開放1

・生産から生活まですべて平等な分配を原則とする …毛沢東
・資本主義的な要素の競争の原理を入れる ……………劉少奇、鄧小平
この対立が続き文化大革命を経て、最終的に鄧小平の主張する資本主義的要素を取り入れた政策が勝ち、1978年に改革開放路線が開始され、1990年代から市場経済が導入された。

「中国の政治は社会主義、経済は資本主義」の言い方は誤り。中国には所有制は無く使用権は可)、公有制の国に資本主義はあり得ない。産業構造でも川上産業と言われる鉄鋼、エネルギーなどのインフラ関連、金融四社など主要な産業は国有にして、末端の製造業は民間企業である。従って経済も社会主義と言える。マーケットの部分は市場経済を大いに導入しているが、これは改革開放の精神である。市場経済がどんどん進み、GDPでも国有企業よりも民間企業の方が多くなっている。中国の経済が大きく成長できたのは民間企業のお陰であり、本来なら国有企業改革も必要である。(後述)

(3)中国の成長モデル

人々は中国共産党について行けば豊かになれる、すなわち経済発展は人々を惹き付けていく重要な手段と一般に見られている。しかし、どんなに経済発展しても民主化することは想定していないと思われる。どんなに経済発展しても共産党の一党独裁は変わらない。1980年代中ごろ鄧小平は中曽根総理との面談で、将来的に西側の国のように民主化することを否定しないが、今は未だその時期ではないと伝えた。しかし、胡錦涛政権の後半ごろ(10年ほど前)から西側と違う方向を目指すようになったと思われる。大きな方向転換があったのではないか。

2.経済発展と民主化の相関関係の変化
(田中明彦教授の「三圏域とGDP」の図で解説。)

(1)経済発展すれば、人々の権利意識が高まり、国の民主化が進む…相関関係あり(従来の考え方)
経済発展と民主化度の高いアメリカ、日本などの先進国、そこを目指して台湾、韓国、ブラジルなどが続き、多くの国は経済発展すればこのグループに入っていくと考えられていた。

(2)経済発展はするが民主化はしない国…相関関係なし(最近の傾向)
中国、ロシア、サウジアラビアなど。最近増加傾向にある。
経済発展をして豊かになると納税などを通じて人々の権利意識が高まり、民主化が進むという法則は通じなくなって来たらしいことを意識する必要がある。民主主義の国や地域が減り、先進国の方が少数派になるかもしれない。中国がおかしなことをやっている、中国が変だとは言えないかもしれない。

3.中国の将来像と国際関係

(1)2025年:中国製造強国を目指す(2015年国務院:イノベーションを推進し製造業で優位性を築く)。

(2)2049年:アメリカに追いつく≪2017年(秋第19回党大会の習近平の演説)≫
                                   2019年5月会報星条旗1

①2049年には中華民族が世界の諸民族をリードし、中国的特色のある社会主義現代強国を作る。実現するために、中国共産党の指導力を一層強化し、人々の全中国の資源を共産党に集中する。

②「新型国際関係」という概念の提起。
経済発展に基づく利益によるウィンウィンの関係を構築し、パートナーシップができ上る運命共同体を中国が実現していく。
⇒従来の先進国の考えは民主主義が広まれば世界は安定するので、その前段階として経済発展のために低所得国を支援するというものである。(日本のODAなどもこの発想に基づく)

(3)経済力を背景に世界各地域へのインフラ整備や国際公共財の提供などの経済活動を行っている。遠い国には経済中心、経済力が進んだ国には政治や軍事も関連を持つ。(トルコとは軍事友好交流、逆にインドはすでに軍事的プレッシャーを感じている)

(4)習近平は国際秩序を守るというが、守るのは次の第一項目のみ
・国際連合とその関係機関の決定する秩序は尊重する
・アメリカとその同盟国との軍事的関係は無視(日米安保など)
・アメリカや先進国間で作っている価値感には従わない

(5) 基本的スタンスは(ⅰ)アメリカに追いつくこと(ⅱ)アメリカと違うモデルを採用すること。

4.中国が直面する課題(人口問題=習近平の焦眉の課題)

(1)一人っ子政策の歪み(この政策は1980年前後から始まる)
 生産労働人口はすでに減少傾向にあり、2020年後半から高齢化が一気に進む。
⇒生産労働人口が減少する中で高度成長した国は世界中で前例がない。

(2)少子化の対策と問題点
・子供の出生率を上げるのは困難(大都市=北京、上海、深圳=の住宅事情は極めて厳しい)。
・外国人労働者の受け入れ…従来から外国人を厳しく規制をしており実現は不可。
・AI、IOTの活用…単純労働を減らせば労働人口の不足は何とかなる考え、多額の研究投資をしている。
⇒モデル未来都市:雄安(河北省保定市)。

(3)社会保障費の問題⇒大きな財政問題になりかねない
➀急速な高齢化の中で、最近5年間で社会保障費が急速に増えており、財政を圧迫しかねない。
②保障金額が低いことと、省間の金額格差の大きいことも問題。
⇒省間格差は豊かな省(主として沿岸部)が貧しい省を支援する制度があるが不満が出ている。

(4)スマートフォンをはじめとするITによる監視社会
・情報連絡の監視、監視カメラ、電子マネー(税収アップ、買物・旅行・食事などの支出などを個人
別に把握)、ビッグデータによる国民の意識・情報の収集
・行き過ぎの反作用として民間活力の低下、イノベーションの停滞の懸念がある。
⇒中国には「上に政策あり、下に方策あり」という諺がある。

5.中国が直面する課題(習近平政権の強みと弱み)

(1)面従腹背(サボタージュ)
 習近平は強固な基盤の上にあり非常に強いので、指示命令は徹底されているかに見えるが、すべて順調ではない。中級幹部や地方の幹部の中には、中央から指示を出しても動かない、やらない日和見的な面がある。(人民代表大会における李克強首相の叱責)
例えば反腐敗運動は、誰をどのタイミングでどのように罰するのか不明確なので、特に地方の中級幹部クラスは何かをやると、それを口実に粛清される懸念を持っている。行動して疑念を持たれるより、何もしない方が得策と考える。要は多くの事について基準が曖昧・不明確であり、安心して行動できない。

(2)進まない国営企業改革
・企業改革の進まない国有企業
・経済発展しても民主化の進まない国有企業
国有企業は資金や許認可などで優遇され、もろもろのメリットがある。従業員の中の中産階級の多くは共産党員(中国人口約13億人の内9千万人)で、相応の生活をしており、自らの国有企業改革にメスを入れるような自殺行為はしない。逆に政府の中には大手の通信・IT企業 アリババ(通販)、テンセント(ゲームソフト他)、バイドゥ(通販ほか)を国有企業にすべきとの議論が以前から続いている。
ちなみにこの三社は人民代表大会、政治協商会議に代表(共産党員)を出しているが、先般カナダで副総経理が逮捕されたファーウエイ(華為)は代表を出していなかった。(完全な民間企業である華為にアメリカはどうして手を出したのか?) 
2019年5月会報ペンス講演

(3)アメリカの対中政策の転換
昨年1年間でアメリカの対中観は大きく変化し、非常に厳しくなっている。
ペンス副大統領の演説(2018年10月ハドソン研究所でおこなわれた)
包括的に中国を批判している。内容は民主主義、テクノロジー、知財、人権、軍事安全保障、台湾問題、新疆ウイグルの民族問題などである。テクノロジーを不正に入手している、アメリカの民主主義を妨害しようとしている、ロシアと同じだとまで言っている。

➀中国はこの演説をペンス個人的なものとしたいが、アメリカ議会(共和・民主両党)、官僚,省庁、司法などあらゆる部門がペンス副大統領に協調し、批判するだけでなく新しい法律を作り、中国に制裁を課そうとしている。

②中国は北京でやっている経済交渉でトランプ大統領に賭けているが、これは中国側の誤解で、この交渉が一旦妥結しても、そのあとから数々の批判や具体的な政策が中国を襲う。

③アメリカは、指定した対象製品を中国と取引しない、指定した産品を扱っている中国系企業とは取引しないという制度を近々作る。この種の会社はアメリカでは営業活動が出来なくなる。

④これらの制度は同盟国に拡散していく。テクノロジーについてファイブアイズ(アメリカ、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア)に対し同じ基準でやることをアメリカは要請している。⇒日本はアメリカの言うことをすべて聞くことは非常に難しい。サプライチェーンとして日中の緊密さはアメリカと全く違う。但し黙ってやれば第二の東芝ココム事件になりかねない。
                           2019年5月会報トランプと習近平1

6.アメリカの中国に対する危機感の背景

アメリカは歴史的観点から、中国に対する危機感を持っている。
(2000 years of economic history in one chart 図で解説=年次別世界のGDPの国別ウェート)

①2000年にわたる世界のGDPの国別シェアで見ると、西暦0年から1700~1800年ごろまでは世界のGDPの約50%は中国・インドが占めていたが、1800年代に入るころから、いわゆる欧米の先進国にGDPが集まり、中国・インドの比率は10%程度に減少した。人口の少ない先進国に富が集まった。

②これは産業革命の影響であり、特に蒸気機関の発明に依るところが大きい。新しいテクノロジーにより、一人当たりの生み出す富が圧倒的に欧米の方が多くなった。

③蒸気機関からスマートフォンに至るまで欧米の先進国(ソ連を含む)がテクノロジーの進歩・転換を主導し、多くの富を稼いできた。日本も上手くこの勝ち組に乗ってきたと言える。しかし、この20年間に中国・インドのGDPのウェートは上がってきている。彼らが先進国のテクノロジーを上手く利用して富を稼ぎ、再び追い上げてきた。

④アメリカは、次のテクノロジーの革命・転換点は中国が主導するのではないかということを怖れている。5Gにおけるファーウエイはその象徴ではないかと危惧している。特に前述した2049年の習近平の目標及び中国製造2025プロジェクトを絡ませて考える向きもある。
⇒国防省を含めワシントンでは中国の固有製品が危険であるとのリストアップが行われている。

7.中国側の対米交渉

アメリカの中国に対する厳しい姿勢を受けて、中国で外交に関し大きな転換点があった。
2018年6月中央外事工作委員会=重要視されている会議で習近平が仕切っている。

この会議で確認された基本方針は
・アメリカ重視、しかも敵対しない、穏便に。
・大国はアメリカだけではない。外交に大国・小国は無いので、どの国ともしっかりやる。とりわけ大国とは個別突破主義。

8.安倍訪中の誤算と日中関係

➀安倍訪中(2018/10)は訪中直前にペンス副大統領の演説(前述)があり、米中の緊張が高まった非常に悪いタイミングであった。安倍訪中は先に決まっており、日中関係を改善したいと途絶えていた首脳交流が目的だったが、世界のメディアは訝しげな印象をもった。

②訪中前、基本的には2008年に終了し、わずかに細々と残っていたODAについて改めて終了を宣言したのもアメリカへの配慮である。(技術教育に伴う技術移転などしないことの表明)

③一帯一路については2017年に「開放性、透明性、経済性、財政の健全性」の4条件が保たれれば評価すると表明しており、中国側はこの4条件を言わずに日本が容認したことを内外に宣言した。

④日本の代表団は中国と新しい52のプロジェクトを日中以外の第三国でやることを発表。中国からは日本が一帯一路に賛同して、東南アジアで行動するように見えた。日米関係もあり、安倍総理の立場は微妙であり、中国側も受け入れるようでありながら、歴史や領土問題では受け入れなかった。
        2019年5月会報一帯一路構想1

9.一帯一路の課題と中国の対外支援の見方

(1)習近平は民主主義を媒介にしない新型国際関係の実験場として、一帯一路を位置付けている。重要な枠組みは年に1回のフォーラム程度で、大本営があって、順次指示を出しているようなものではない。多くの場合は結果論である。

(2)日本における中国の報道ぶりについて幾つかの問題がある。
低所得国(ラオス・カンボジアレベル)に対する資金援助について債務の罠とか、借金漬けにしたとか取り上げている。当たっている点もあるかもしれないが、それをもって批判してもあまり意味がない。中国の援助がブラックマネーなら日本や先進国はクリーンな資金をこれらの国に提供できるかと言えば中国ほどの余裕はない。中国の資金提供が無ければ、国家建設は止まってしまう場合がある。

デジタル監視システムを設置したから民主主義を脅かす人権問題などと言っても、これにより治安が良くなり、2~3年前までは街が荒れて、住民の生活が脅かされていたものが助かったことを、これは民主主義に反すると言ってどうなるか。中国のやっていることを批判するのは簡単だが、それでもなお受け入れざるを得ない国々の人に何をしてあげられるかの問題である。

ただ、これらの援助を受ける側が中所得国(マレーシア、インドネシア、タイ、など)の場合は中国に対し、きちんとものが言える(例えば鉄道建設に対するマハティールの交渉や最新のデジタル技術の提供を要求)。従ってその国が中国とどのような関りを持っているかによって一帯一路の評価は変わる。それを十把一絡げにして中国を評価するのは当たらない。

(3)中国はラオス・カンボジアレベルの低所得国に対してはどんどん資金を提供していけば良いが、所得水準が中国と同等か、より高い中所得国に対しては中国は何ができるかは中々難しい。中国単独でできることに限界がある。そこを理解しないと習近平の言う新型国際関係によるウィンウィンの関係は構築できなのではないだろう。中国はまだまだ大変な状態である。



本日、中国の目指すものは何で、そこにある課題は何かについて話した。内政問題、外交問題の目標は分かるが、それを実現するのは中々大変で中国は相当苦しんでいる。お願いしたいのは、頭越しに中国のやっていることが「悪い、けしからん」と言うのではなく、中身を見て共通するものには寄り添って一緒に解決していくことが望ましい。日本は先進国で強いから、中国は日本と全然違う発想を持った人が多いと言うことを前提にして批判すべきである。
―質疑応答は省略します― 
                                                (文責:小笠原正文)

2019年5月会報川島真先生風景2








◎会員の声


「 山 の 話」
                                    中島 巖

私は山へは殆どの場合一人で登ります。最近熊などの野生動物が増え人に危害をあたえる事があるのと、そもそも私は蛇が怖く虫も嫌いなので一人での山行は避けるべきなのですが、写真撮影が登山の大きな目的で、撮影している間パーティーの仲間に迷惑を掛けたくないためです。
                         2019年5月会報中島さん写真1

そのルートは私のお気に入りの一つで、登山口から尾根まで標高差700mを鬱蒼とした森の中の沢沿いに1時間半ほど掛けて登り、その後は尾根伝いに岩場を上り下りし、痩せた尾根を通り、深い笹をかき分け、壊れそうな木橋を渡りして神社の奥宮に着きます。奥宮の狛犬は他ではまず見られない姿の石造りの素朴なものですが、このように重たいものを麓から担ぎ上げた昔の人たちの深い信仰を感じさせます。この神社に到る尾根筋の視界は広く遙か彼方の山々を見通す事が出来るので、写真を撮るには良いルートなのです。

登山口から尾根までは急勾配なので高齢者にはなかなかに辛いルートではありますが、春の花々・初夏の新緑・秋の紅葉・冬の凍てついた沢など四季の移ろいを一年中楽しむ事が出来ます。また途中に三つの個性豊かな滝がある事も魅力です。最初の滝は落差こそ小さいものの下流にあるため水流が多くいつも元気に流れ落ちています。二番目の滝は落差40m程、登山道は滝壺前の沢を渡るようになっていて登山者は滝の真下を通り、迫力を肌で感じる事が出来ます。三番目の滝は尾根に近く水量も少ないためかさらさらと音も無く大きな苔むした岩を伝って流れ落ちていて気品があり、周囲に配置された祠等とともに、深閑とした森の中にあって独特の雰囲気を醸し出しています。この滝には石造りのベンチが置かれてあり、一息入れる事が出来るようになっています。
2019年5月会報中島さん写真4

その日もJRの終点の駅から一番のバスに乗り、登山口まで行きました。バスを降り身支度を調えて登りに掛かります。登り初めはいつも馴れるまでの間、疲れを強く感じます。暗い森の中を喘ぎながら進み、三番目の滝に着きました。補水と撮影のためベンチに荷を下ろしたとき、向かい側のベンチに一人の老婦人がいて私に声を掛けました。「ここで写真が撮れますか?」。私は何を言われたのか即座には理解できませんでした。『自分もカメラを持っているから撮ってほしい』あるいは『こんな(暗い)ところで写真など撮れるのですか』このような意味かと思いました。応えようが無かったので「はあ」と曖昧な返事にもならない事を言って、よくここまで登ってきたなと余計な事を考えながら自分のカメラで写真を撮りました。4~5分掛けて写真を撮り終えてベンチに戻ったときには、既に老婦人の姿はそこに有りませんでした。

なんとも言えない不思議な感情に囚われた事を記憶しています。良く考えてみると、一番のバスで登山口の停留所を降りたのは私一人です。このルートは一本道で後から来た人に追い越された事もありませんし、他にルートが有ったとしてもこのルートより遠回りになります。逆ルートからここまで来ようとすれば、朝余程早くに出発しなければなりませんが、そのような必要は普通には無いように思われます。可能性としては登山口の近くに宿泊した人が朝早く登り始める事が考えられますが、このルートはそこまでして登るメジャーなルートではありません。私がこのルートを選ぶのは被写体として気に入っているからですし、また早起きして一番のバスに乗るのは、朝の空気が澄んでいて写真撮影に適しているからです。

今もってあの老婦人は(繰り返しますが老婦人です)どのようにしてあそこにいたのか理解が出来ていません。前にも書きましたとおりかなり急勾配の道で普通には簡単ではないのです。いったい何だったのでしょうか・・・

                  2019年5月会報中島さん写真6



2019年(令和元年)学習会スケジュール

2019年5月学習会スケジュール2
                  
★スケジュールは事情により変更、中止する場合があります。予めご了承ください。
○学習場所 東京経済大学の教室                                
○各学習日とも土曜日 13:30~15:30 (受付開始は12:30より)
○下記の学習会は映画上映のため終了時間が1時間遅くなります。
★ 7月20日(映画を読む会)  13:30~16:30 


(編集後記)
「平成」と書かれた額を手に新元号を発表する小渕官房長官をテレビで見たのはついこの間のことように思い出されるのに、あれから30年も経ったのですね。「令和」と改元後、初の会報をお届けします。東経大キャンパスでの学習会は6回を終了して、現時点の出席者総数は昨年同時期を上回りました。願わくはこの勢いで、残る4回の学習会にもご出席ください。住宅街には鮮やかな色の草花が咲き通行人の目を楽しませてくれていますが、東経大の木々の緑もまぶしいほどに輝いていますよ。それでは25日にお待ちしています。(編集長:大崎尚子)

                     
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