学習会要旨

◎3月17日学習会の要旨  

2018年4月会報南川先生2

日 時:2018年3月17日(土)13:30~15:30 
場 所:東京経済大学 5号館 E102教室
テーマ:「地球環境問題の今」
講 師:南川 秀樹 先生
(東京経済大学 経済学部 客員教授)                                
出席者:229名(会員:男性167、女性58名、
        非会員:男性2名、女性2名)                                   

(はじめに)

まず環境問題の大きな流れを振り返ってみたい。
1800年のイギリス産業革命以前は
・森林大規模伐採→土壌の崩壊→塩分・水たまりの増加→農地減少し農業生産が落ちる
・廃棄物処理(し尿)→ネズミ・蚊・ハエの増加→感染症増加(ペスト・コレラ)
                            2018年4月会報産業革命1

産業革命以降は自然エネルギーから主に化石燃料(石炭)へ。そして法システム・経済学・数学の発達をベースに様々な技術革新による大規模生産に伴う環境汚染へと流れが変わった。20世紀の後半は更に汚染の規模は地球規模へ、そして原子力が生まれ汚染の性格も変化してきた。
次に20世紀後半からの動きを説明する。

1. 1972年 国連人間環境会議  Only One Earth  ストックホルム

70年代「Only One Earth」の考えがクローズアップされる。当時の背景として

①人口の急激な増加。特に後進国で増加し汚染が進む。②国境を超える汚染が表面化する。英独の鉄鋼、化学生産に伴いその大気汚染が北欧に移転し、そこでの湖汚染が進んだ。また、国際河川(ドナウ・ライン・セーヌ)の汚染が進む。この対策として「宇宙船地球号」の考え、つまり全ての国の協力、あらゆる科学を統合した学際的協力の必要が唱えられる。1972年の会議で「人間環境宣言」が初めて出されるが、経済格差の大きさから先進国対後進国の対立が特に表面化した。

2. ブルントラント委員会 1987年  Sustainable Development
2018年4月会報オゾンホール

80年代に入り、①オゾンホールの発見による紫外線の問題 ②地球温暖化の問題 ③有害廃棄物の問題に対応するため、後のノルウェイ女性首相となるブルントラント委員会で報告書「Our Common Future」を出す。この中では先進国も後進国も共に協力をする「Sustainable Development=持続可能な成長」の考え方を述べる。これは今も認められている考え方。

3. 1988年 IPCCの設置  国連総会―シュワルナゼ演説

88年当時、国連総会でソ連シュワルナゼ外相は「今後は核戦争から環境を守る戦いになる」と演説し高く評価される。背景には米ソ中距離ミサイルの使用禁止条約締結や前年のチェルノブイリ事故、アラル海の砂漠化などの問題があった。
また、科学界ではIPCCを設置し、気候変動に対する科学者の見解を5年に一度まとめ、客観的科学的に地球温暖化問題を見て行くこととした。

4. 1992年 地球サミット  ブラジル・リオ

92年のリオ・サミットでは ①気候変動への対策の枠組を作る条約 ②生態多様性の維持の条約ができ、環境問題は新しいステージに入る。

5. 気候変動・地球温暖化


①基本的なメカニズム
                                 
2018年4月会報温室効果ガス

(地球温暖化のメカニズム)
地球の大気には二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが含まれる。これらの気体は赤外線を吸収し、再び放出する性質があり、地球表面から放出された赤外線の多くが大気に吸収される。人間は化石燃料を大量に使用することで温室効果ガスの排出を急速に増加させた。これにより温室効果(赤外線の吸収)が強くなり大気の温度が上昇する。これが「地球温暖化」である。

(気候変動枠組条約作成時の問題:1992年時)
先進国対途上国の対立。途上国代表は中国で、そのGNPは日本の1/8程度。「CO2の排出は先進国が悪い。途上国は先進国の動きを見て考える」と大議論になる。結局、「共通だが差異ある責任」等の原則とし、先進国、途上国の義務を規定したが、具体的な削減目標は規定しなかった。
 
②京都議定書
2018年4月京都議定書1

COP1はドイツのベルリンで開催され、メルケル議長、その時にCOP3(京都)では具体的な目標を定
めようと決めた。メルケルさんは落ち着いたリーダーシップのある人だ。
                            12018年4月会報メルケル首相

「京都議定書(1997年採択)の主な内容は下記」
 ・先進国全体で1990年比少なくとも5%の削減を目標
 ・先進国に対し法的拘束力のある数値目標を設定 
2018年4月会報表2
中国を含む途上国には削減義務なし。

③IPCC報告と科学的な知見

世界の科学者が集まって発表した第5次評価報告書では ㋑気候システムの温暖化には疑う余地がない。㋺人為起源の温室効果ガスの排出が20世紀半ば以降の温暖化の支配的な原因(95%の可能性)とし、将来の気候変動のリスク及び影響は ㋩今世紀末の気温上昇は、厳しい温暖化対策が取られない場合は2.6~4.8℃上昇。㋥厳しい対策を取った場合は0.3~1.7℃上昇。㋭2℃の目標を達成するには2050年に40~70%削減(2010年比)かつ21世紀末までに排出をゼロにする必要がある。

(温暖化の影響=不規則な変動)
洪水・降水・海面上昇・食料安全保障への影響・氷床の融解・生態系への影響・サンゴの白化・干ば 
つなど。また温暖化によるシリア、スーダンの砂漠化が内戦の大きな原因となっている。

(世界のCO2排出量推移)
2018年4月会報表1
1

④パリ協定への途
                  
2018年4月会報パリ協定1

COP21 「京都議定書」に代わる2020年以降の温室効果ガス排出削減のための新たな国際枠組み。
歴史上初めて、米国、中国、インドを含むすべての国が参加する公平な合意。
長期気温目標はこれまでの工業化以前に比べ2度を上回らない、できれば1.5度以内の上昇に制限す
る努力をする。

⇒世界は今、「低炭素」から「脱炭素」へ歴史的な大転換期を迎えている。
2016年11月4日の発効。168か国及びEUが締結。締結した国は4年間は拘束される。

⑤トランプの動き
2018年4月トランプ大統領1

石炭・石油・鉄鋼業界などがトランプを支援している。このため支援者を支持する対策に注力。その結果、環境規制の緩和に方向転換している。今回の貿易関税問題でも最終的には米国にとってマイナスとなるだろう。北朝鮮問題を含めて米国の動きが心配。

⑥世界の動きと再生可能エネルギー

GDPとGHG(温室効果ガス排出量)の動向を見ると、日本は両方とも増えていないが、世界の動向はGDPは増えてもGHG総量は減っている。要するに日本は再生エネルギーの取組みが弱い。日本は太陽光のみで、その他の再生エネルギーは遅れている。太陽光にしてもパネルメーカーが世界の上位10社に1社も入っていない状況。日本企業の再生エネルギーに対する技術力が、どこか弱いのでないか。

世界では脱炭素化に向けてパリ協定をビジネスチャンスと認識、金融面でもESG(Environment Social Governance)投資の規模が年々拡大している。

6. オゾン層ホール発見と保護
 
オゾン層は有害な紫外線の大部分を吸収し、地球上の生物を守るバリアとなっている。冷房用、冷蔵庫用フロンなどにより、南極上空ではオゾンホール(オゾンの濃度が極端に減ったところ)が観測されている。代替品で対応可能であり、実行されている。

7. 中国の環境汚染と対策
                                     
 2018年5月年会報中国国旗1

今年は北極の北風が強く例年に比べれば大気汚染はひどくはないが、世界の大気汚染の死者700万人のうち160万人が中国。黄砂も含めPM2.5も深刻、肺に入りやすい、心臓にも悪いのが特徴。より深刻なのは土壌・水汚染の問題。ガンの村と言われるところが200か所以上ある。大躍進政策による人民公社の乱開発、文化大革命による混乱等により、開発重視先行、環境対策は後回しとなっていたが、最近は習近平の方針で ㋑石炭を燃やさない ㋺自動車のEV化を進める ㋩排ガス対策強化 ㋥古い鉄鋼工場の閉鎖など大気汚染の規制が急激に強くなってきた。ようやく成長一辺倒をやめた模様。

8. インドの環境汚染と対策
2018年4月インド国旗1

デリーの大気汚染とガンジス川の汚染は想像以上だ。ともかく古い車が多い。廃棄物の焼却もいたる所で行われている。大気汚染は中国を上回る。対策が急務だ。

今日は少し時間が足りなくなった。皆さんとは機会を改めて、また環境のお話をさせて頂きたい。

【質疑応答】
                        2018年4月会報南川先生3

Q1:2015年の国連会議で2030年までに持続可能な環境目標17項目が掲げられたが、日本としては何を優先順位に取り組むべきか教えて欲しい。
A1:国連は (Sustainable Development Goal)という長期的持続可能な目標17項目を掲げたが、殆ど何も達成できていない。Climate Changeはパリ協定を基に進められるが、貧困(Poverty)つまり1日$1.25以下の人を半減することも現実には出来ていないし、具体策もない。ESG投資を通じて世界全体の福利の底上げをしようという案が国連コヒアナン元事務総長から提案され動いている。日本も的を絞ってやるべきだ。


Q2:福島の原発事故につき放射性物質の中間貯蔵処理や原子炉の最終処理を日本は本当にできるのか。
A2: 頭の痛い問題。目下、中間貯蔵問題にしても30年以内に処理できるかはノーアイディアだ。
  今は濃度を少しずつ減らし、道路の下や堤防などのインフラに利用し、持ち出し量を減らす目標でやっている。原子炉の問題も40年で廃炉と言ってはいるが、福島はチェルノブイリと同じ、レベル7の最悪の事態。チェルノは100年後解決を目標に石棺で封鎖しているが、傷んできたので、再度上にかぶせている。40年の根拠は全くなく、中間貯蔵の30年解決の自信はない。 
                                                                 (文責:増田保武)


メニュー
アクセスカウンター
リンク