学習会要旨

◎ 4月15日(土)学習会の要旨                        
5月会報大淵先生1

      
日 時:4月15日(土) 13:30~15:30
場 所:東京経済大学 2号館 B301教室 
テーマ:「健康寿命の延ばし方」  
講 師:大渕 修一 先生

東京都健康長寿医療センター 東京都老人総合研究所
在宅療養支援研究部長                              
出席者:218名(会員:男性148名、女性55名            
非会員:男性10名、女性5名)


【講演要旨】

身近な問題について、分かり易く、ユーモアにあふれ、実演も含めた大変有意義な講演でした。

1.はじめに

5月会報渋沢栄一1

○渋沢栄一は「論語と算盤」を銘に近代日本の金融・産業を創始したが、併せて社会福祉・社会保障の基盤づくりにも貢献した。東京都老人総合研究所は、渋沢栄一のつくった「養育院」が母体となっている。組織改正で「健康寿命医療センター」となったが、「健康長寿」の名前で皆様に愛されるようになりたい。

研究所の業績

 ・従来の老化モデルは年齢と共に右肩下がりに老化が進むとされてきた。同時に多数の対象者を呼んで観察・計測をした「横断研究」といわれるものだったが、昭和40年代の方と明治40年代の方を同一に観察・計測をしてこれをもって老化の説明になるのか? 健康状態による変化を反映しているのか、認知状態にしても教育環境が違う人たちを同一に観察するのはおかしいのではないかと考えた。
 
・そこで、一人の人を長年追いかけて老化を研究すれば真の老化とは何かを探れるのではないか、という観察を行った。これを「縦断研究」という。特定の地域に限らず多数の地域にわたって研究を重ねた。その結果、一様な右肩下がりではなく、最後の2年間くらいで急激に落ちる終末低下が観測された。

・さらに私の業績は、老化は不可逆との考え方に疑問を感じ、「介入研究」の分野の研究を始めたことである。高齢者でもトレーニング次第では老化を防げるということが明らかとなった。終末低下のターニングポイントに活動を促すことによって(介入)老化のカーブを上向きにさせることができる。

日本の高齢化社会

                               5月会報高齢化社会1

・日本の高齢化率(65歳以上の総人口に占める割合)は1950年代の5%から2050年には40%に達する。米英等先進国(概ね20%くらい)に対して高い。平均寿命を90歳、人口の増減がないと仮定して高齢化率を求めると28%になる。従って28%くらいが安定した高齢化社会といえる。

・高齢化率40%の社会をイメージしてほしい。新しい文化、新しい生活の仕方が生まれなければいけない。若者と同居できる地域社会での居場所づくりが大事だ。

・年齢三区分人口の推移をみると、1950年から2050年の間に働く人は半分、高齢者は倍になる。社会保障を負担する人が半分に減って使う人が倍に増えるということ。若い世代は一人当たり4倍となる。(2014年社会保障給付費は115兆円)

2.高齢化社会への対処法

○ バックキャスティング
 
・この予想される社会保障費のひっ迫を乗り切るには、バックキャスティングが有用である。
・将来の社会を予測し、現在何をすればよいのかを導き出す方法を考える。
          5月会報大淵風景3

<隣の人と今の社会保障費のままで2倍の人数が楽しく暮らせる方法を話し合ってください>

・欲をかかない、ある程度我慢する、物をシェアするなどがいいのではないか。
・シュロックの釣鐘モデル:要介護者と元気者の割合は 釣り合う。社会全体で要介護者を支えるというのでは
なく、元気者と釣り合っていればよい。サービスを提 供できる人を行政が積極的に支援することが解決策だ。

老年症候群

・今の世の中は「元気で長生き」が目標だ。これを「健康寿命」という。寿命を延ばすためにしなければいけないことと、健康寿命を延ばすためにしなければいけないことはイコールではない。この違いをしっかり認識してほしい。元気で長生きしたい人は介護の原因のエキスパートになって欲しい。

<隣の人と介護の原因と死亡の原因のどこが違うか話し合ってください>

・死亡の原因はガンをはじめ生活習慣病に係るものが多い。介護の原因は脳血管疾患もあるが、死亡の原因とは違う要因が
ある。多いのは転倒・骨折。直接死に至ることはないが、これにより外出が怖くなり、生活を狭めることになる。関節疾患もしかり。
また高齢による衰弱も原因。認知機能の低下も大きな原因である。こうした原因に皆さん敏感になるべきだと思う。

・これら原因を当研究所では「老年症候群」という新しい名前を付けた。加齢により現れる症状のうち、生命に影響を与えるもので はないが、生活に支障を与えるものをいう。

・特に関節疾患が要介護の原因になる女性は男性の3.3倍もいる。逆に脳血管疾患は男性の半分である。

老年症候群の予防
 
                                5月会報スポーツジム1

・元気で長生きするためには、老年症候群の予防が大切である。それには早目に発見して、早目に対処していくことが必要。
70歳以上の女性の33%は尿失禁(板橋の調査)。トレーニングも有効だが、尿パッドもあるので、生活の幅を狭めないというこ
とが最も大事である。
5月会報指わっかテスト2

・老年症候群を自分自身でチェックする方法がある。「指わっかテスト」といい、両手の親指と人差し指でわっかを作り、自分のふくらはぎを測ってみる。スカスカだったら要注意、筋肉が減っている(痩せ)。改善するためには、食べて動くこと、特に蛋白質の摂取が大切。種が同じ蛋白質、つまり肉の摂取が必要。

・「ルーの3原則」:①使わなければ退化する。②使い過ぎたら破壊する。③適度に使えば発達する。
高齢者は特に、自分の「適度」を把握することが大事である。これには個人差がある。これを知るためには「過負荷の原則」がある。自分の体にちょっとだけ刺激を感じるところを探してほしい。
                      5月会報スクワット1

・高齢者に適する「筋トレ」を紹介する。抗重力筋のうち大臀筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋の3つが
大事。4分の1スクワット(ひざを曲げる角度が4分の1)が有効。スロートレーニングといって
これをゆっくり行い、8回目の刺激が一つの目安。ややこたえるくらいが自分にとっての「適度」。多過ぎれば時間を短くし、足りなければ時間を長くする、または片足スクワットをやるなど調節してみるとよい。

<大きな古時計の歌に合わせてやる方法の紹介と実演>


・運動による刺激は認知機能の予防、改善にも有効であることがわかっている。認知機能改善には、その他青み魚やポリフェノールを取ること、頭を使うことが良いとされる。これは観察型研究で良いことがわかっているが、実験で効果がわかっているのは運動のみである。
5月会報古時計1

(注)1回の動きで12秒、1番を歌うと6回スクワットすることになり、ちょうど良い速さ。
大殿筋(だいでんきん)、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)


3.これからの高齢化社会

○不健康寿命       

・厚労省の定義によれば、不健康寿命は男性9年強、女性12年強となっているが、要介護度2から死亡までの期間は男性1.3年、
女性2.7年でそう長患いする人は少ない。よくピンピンコロリが良いと言われているが、家族にとってはショックが大きい。
半年、1年くらいの猶予がある方が良いのではないか。

厚労省定義:あなたは健康上の理由で日常生活に何か影響を及ぼしていますか、という問いに「はい」と答えた時から不健康寿命が始まる。要介護になってからではない。この差(10年と2年)8割は心の不健康寿命といえる。

・この8割に目を向ける必要があると考えた。板橋で65歳から84歳の方々を調査したところ、バスや電車で外出できなくなった人
(要支援状態)は6%弱しかいないのに、友人や親戚と週に1回も顔を合わせていない人が52%もいる。

○行く場所をつくろう

・「継続理論」:本人は何かやりたいことをもっていると、参加し続ける。
「離脱理論」:社会から役割の期待が減少すると、参加する機会が減る。
これからは離脱理論に着目し、行く場所をつくっていくことが社会の目標と考えている。

・高齢者の心の健康、活動の場所をつくっていこう。大きな場所でなくていい。一人1個ずつそういう場所をつくっていこう。地域の高齢者を大事にし、その力を利用していこう。できないことに目を向けるのではなく、そして少しでも体にいい選択をしよう。認知症になっても、高齢期になっても怖くない社会をつくっていきたい。

○ 活動のヒント
 
・できないことに目を向けるのではなく、できることを見つけてほめよう。

4.質疑応答

Q:自分自身の体質をどう把握したらよいのか。
A:遺伝子的にとらえる考え方もあるが、環境によって体質、寿命は変わる。自分の体質を悲観的に見ないで、元気で長生きするぞと考え方を変えることが大事。ヒトの限界寿命はこの100年変わっていないが、そこに至るプロセスは環境によって変わる。早期発見にいちばん有効なのは歩行速度を測ること、認知機能を測ることが必要。病気予防から老年症候群予防に心がけていただきたい。

Q:65歳以上を老年と定義するのはおかしいのではないか。
A:厚労省が言っているのではなく我々老年医学会が言っている。定義を変えたとしても、寿命グラフが横にずれるだけ。それより自分ができることを社会に提供することの方が有意義である。寿命は長いことずっと42歳だった。今日のように70、80になったのは最近。65歳以上の新しい高齢化社会をつくっていこうではないか。        
 (文責 山田 健)

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