学習会要旨

◎4月8日学習会の要旨                            
5月会報榎先生1

        
日 時:4月8日(土) 13:30~15:30
場 所:東京経済大学 2号館 B301教室 
テーマ:「銀河の中心に潜む超巨大ブラックホール」 
講 師:榎 基宏 先生 (東京経済大学 経営学部准教授)
出席者:187名(会員:男性133名、女性48名        
        非会員:男性4名、女性2名)   


【講演要旨】


本日の講演内容
 
近年、多くの銀河の中心に「超巨大ブラックホール」があり、その存在が銀河の形成と密接に関係している、と考えられるようになってきました。本日は、この銀河の中心にある超巨大ブラックホールについて次の3点からお話しします。

Ⅰ:銀河とはどのような天体か?
Ⅱ:超巨大ブラックホールとはどのような天体か?
                             5月会報銀河1

Ⅰ:銀河とはどのような天体か?

(1) 銀河とは?


「銀河」は、およそ100万~1000億個の恒星が、お互いの重力で引き合ってまとまっている天体である。また、恒星だけでなく「星間ガス」も含んでいる。この星間ガスから恒星が生まれる。銀河のサイズや形態は多種多様だが、形態で「楕円銀河」、「円盤(渦巻)銀河」、「不規則銀河」に分類される。なお、私たちの居る太陽系は「天の川銀河」という円盤銀河の中に存在している。この天の川銀河は、直径が約10万光年の円盤銀河で、太陽系は中心から約2万5千光年離れた円盤の中にある。

銀河の画像を見ると、星々の間に浮かんでいる雲のように見える。しかし、実際は、その星々は天の川銀河の中の星であり、銀河は天の川銀河の外のはるか遠くに存在している星の大集団である。銀河は、宇宙の構造の基本的な単位であり、宇宙の中に散らばって分布している。

(2) 自然界の階層構造の中の銀河

5月会報天の川銀河1

自然界には様々な大きさの構造があり、それらが階層的に存在している。人を基準にしてより大きな構造を見ていくと、人は地球の中にあり、地球は太陽系の中にあり、太陽系は天の川銀河という銀河の中にあり、銀河は銀河団の中にあり、銀河団は超銀河団の中にある。逆に、より小さい構造を見ていくと、人は原子からできており、原子は、原子核と電子からできており、原子核は陽子・中性子からできており、陽子・中性子はクォークからできている、となっている。


Ⅱ:超巨大ブラックホールとはどのような天体か?
 

                             5月会報超巨大ブラックホール1

ブラックホールとは、重力が強いため、そこから光すら脱出できない時空の領域のことである。実在すると考えられているブラックホール天体は、その質量で次の3種類に分類される。
 1.恒星質量ブラックホール:太陽の質量の10倍程度
 2.中間質量ブラックホール:太陽の質量の100~1千倍程度 (存在はまだ未確定)。
 3.超巨大ブラックホール:太陽の質量の100万~10億倍程度

(1)ニュートンの万有引力の法則

5月会報ニュートン1

重力とは「あらゆる物体の間に作用する、お互いに引き合う力」であり、万有引力とも呼ばれる。この力が従う法則が、ニュートンの万有引力の法則である。この法則によると、質量m、Mの二つの物体の重心の距離がrである場合、その二つ物体の間に働く万有引力の大きさFは次の通りになる。
      
 F=GmM/r2
 Gは重力定数と呼ばれる重力の強さを表す定数。

(2)一般相対性理論と重力

                                 5月会報アインシュタイン1

重力が非常に強いところでは、ニュートンの法則ではなく、アインシュタインの一般相対性理論で考えなくてはならない。一般相対性理論によると、物質やエネルギーは、その周りの時空をゆがめる。その結果、まわりの物体はまっすぐ進めず、曲がって進む。このように曲がって進むのは重力が作用した結果である、と解釈される。ブラックホールは、重力が強いため、そこから光すら脱出できない領域のことであるが、これは、その領域の時空のゆがみが光すら脱出できないくらい大きい、ということである。

(3)ブラックホールはコンパクトな天体

ニュートンの万有引力の法則によると、重力がより強くなるのは、物体の質量がより大きい場合、または、物体の重心間の距離がより近い場合である。したがって、天体の質量のわりにコンパクトでサイズが小さいと、その天体の重力は強くなる。なぜなら、天体がコンパクトである方が、その天体の重心により近づけるからである。それ故、重力が強い天体であるブラックホールは、質量のわりに非常にコンパクトな天体である、ということである。

(4)恒星の進化

恒星質量ブラックホールは、恒星の進化の最終段階で形成される。恒星の進化は、銀河と超巨大ブラックホールの形成に大きく関係している。ここでは、恒星の進化を概観する。
恒星は銀河の中を漂う水素が主成分の星間ガスの密度が濃い部分で生まれる。密度の濃い部分が重力で収縮し、温度と密度が十分に上昇すると、中心部で水素の核融合が始まり、恒星として輝き始める。この、中心部で水素の核融合反応が進んでいる段階の星を「主系列星」という。

重力でガスが収縮すると、温度と密度が上がる。核反応でエネルギーが放出されると、更に温度が上がるため、圧力が大きくなり膨張しようとする。その結果、重力による収縮と圧力による膨張がつりあうと、安定な天体となる。これが主系列星である。核反応が進み、核エネルギーが使い尽くされると、圧力が保てなくなって不安定になる。その結果、星の外層がはがれたり、超新星爆発が起きたりして、星を作っていたガスが星間ガスにまき散らされる。最後に、白色矮星、中性子星、恒星質量ブラックホールといった、コンパクトな重力の強い天体が取り残される。主系列星の段階で質量が小さいと白色矮星になる。質量がある程度あると中性子星に、大きいとブラックホールになる。

(5)超巨大ブラックホールとは?

5月会報クエーサー1

銀河の中には、中心部に、非常に明るく輝く「活動銀河核」を持つものがある。「クェーサー」と呼ばれる特に明るい活動銀河核は、銀河の直径の3000万分の一というコンパクト領域が銀河全体の100倍の高度で光っている。この活動銀河核のエネルギーの源が、太陽の質量の100万~10億倍程度もある「超巨大ブラックホール」であると考えられている。

(6)ブラックホールがなぜ光る?

ブラックホールは重力が強いためそこから光すら脱出できないのに、なぜ明るく光るのか? それは、ブラックホールにガスが落下することで重力エネルギーが解放されて熱エネルギーに変換され、それが光エネルギーとして放射されるから、である。ブラックホールにガスが落ちていくと、そのガスはブラックホールの周りをぐるぐる回りながら、円盤状になる。この時、ガス同士が粘性による摩擦でこすれあい、熱せられ、光を放つようになる。同時に摩擦力のために、ガスは渦を巻きながら中心へ徐々に落下し、最終的にブラックホールに降り積もる(降積するという)。その結果、ブラックホールの質量が増える、つまり、ブラックホールが成長していく。

つまり、ブラックホールそのものではなく、その周囲にあるガスが光っているのである。したがって、ブラックホールでなくてもガスが落下すれば光りうる。しかし、他の天体に比べるとブラックホールはコンパクトで重力が強い天体であるため、解放される重力エネルギーも大きく、それ故、ガスもより高温になり、より明るく輝く。

(7)銀河と超巨大ブラックホールの関係との関係は?

近年、活動銀河核を持たない普通の銀河の中心にも超巨大ブラックホールがあることが分かってきた。これは、かつて活動銀河核だったが、落下するガスがなくなって光らなくなった残骸であると考えられている。さらに「楕円銀河の星の質量の総計」や「円盤銀河のバルジ(中心部の丸く膨張した部分)の星の質量の総計」と「超巨大ブラックホールの質量」の間に比例関係があることも分かってきた。これらの観測結果は、銀河の形成と超巨大ブラックホールの間には深い関係があることを意味する。


Ⅲ:銀河の形成と超巨大ブラックホールとの関係は?

(1) 重力不安定による銀河の形成

銀河は、宇宙全体が進化する中で、「重力不安定」によって形成されると考えられている。物質の密度が高い所があれば、そこは重力が強いので、物質が集まってくる。その結果、ますます密度が高くなり、より重力が強くなり、より物質が集まってくる、ということを繰り返して、密度が高くなっていく。この過程を重力不安定という。

宇宙初期に形成された密度の濃淡(ゆらぎ)が重力不安定により成長し、物質密度が高くなったところで、まず、小さな原始銀河が形成される。その後、銀河同士が重力で引き合い、衝突と合体を繰り返し、より大きな銀河が形成されていったと考えられている。また、銀河の中で星間ガスの密度が濃い所で恒星が生まれるのも、重力不安定による。

(2) 超巨大ブラックホールはどのように成長するのか?

銀河が合体すると、銀河の中心にある超巨大ブラックホールは周りの恒星やガスと相互作用しながら、合体後の銀河の中心に沈み込む。最終的に超巨大ブラックホール同士も合体する。銀河が合体する時、重力の影響で銀河の形がゆがみ、星間ガスが合体後の銀河の中心部に流れ込む。中心部に流れ込んだガスが超巨大ブラックホールに落下して活動銀河核となって明るく輝く。すなわち、超巨大ブラックホールは、合体とガスの降積を繰り返して成長する。

(3) 銀河形成・超巨大ブラックホールの研究の現状

大筋は分かっているつもりであるが、関係する個々の過程についての詳細は分かっていないことが多い。

例えば
① 星間ガスから恒星がどのくらい生まれるか?
② 超新星爆発が星間ガスに与える影響はどのくらいか?
③ 超巨大ブラックホールの種になるブラックホールはどうやって出来たか?
④ 超巨大ブラックホールに降積するガスの量はどれくらいか?

銀河と超巨大ブラックホールの形成には、多くの過程が非常に複雑に関係している。例えば、超巨大ブラックホールの成長と恒星の形成の関係を考える。超巨大ブラックホールは、星間ガスが降り積もることで成長するが、その星間ガスから恒星が生まれる。もし、恒星が多く誕生しすぎると、星間ガスの総量が減ってしまうため、超巨大ブラックホールに降り積もるガスの量が減少し、成長が遅れることになる。

このように、様々な過程が関係しているため、ブラックホールそのものだけでなく、宇宙全体の進化や、恒星の進化、星間ガスも含めて総合的に研究を進める必要がある。そこで、銀河形成・超巨大ブラックホール形成の研究では、それらの過程や、過程同士の相互作用についてのモデルを作って組み合わせ、どのように観測されうるのかを多面的に予測し、実際の様々な観測結果と比較して、モデルを改良していくことを繰り返す。

(4) 銀河・超巨大ブラックホール形成の研究の今後

より統計的に均質な観測データとの比較を進めながらモデルの改良を続けていくことで、銀河と超巨大ブラックホールの形成のなぞの解明を進めていく。

例)大規模な観測の進展


          5月会報ハワイ天文台

現在、国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡の新しい装置で、大規模な銀河と活動銀河核のサーベイが進められている。これで得られる大規模な質の良いデータを用いると、モデルの予想とより多面的な比較ができるため、よりよい研究を進めることができる。

例)重力波による観測


一般相対性理論によると、超巨大ブラックホール同士の合体時や、超巨大ブラックホールの種となるブラックホールの形成時には、時空のゆがみが伝わる「重力波」が放射されると予想される。この重力波を観測することができれば、超巨大ブラックホールについての新たな知見が得られるに違いない。重力波の観測的研究はようやく始まったばかりで、超巨大ブラックホールからの重力波の観測結果が出てくるのはまだまだ先である。しかし、理論的な予測がすでになされ始めており、我々の研究グループでも予測を進めてきた。今後の発展が大いに期待される。

                        5月会報榎先生風景1
 
Q&A(要点のみ)

Q.1 ブラックホールの組成はなにか
A.1 ブラックホールになった時点で、元の物質の組成の全ての情報が失われているので、元が水素だ
ったか暗黒物質だったかは分からない。

Q.2 太陽系はブラックホールの周りを周回しているか
A.2 太陽系が、天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホールを周回している、と言うのは正しい。
しかし、ブラックホールの重力で引っ張られて周回しているのではなく、天の川銀河にある星や暗
黒物質など、銀河を作る物質全体の重力の総和により引っ張られて周回している。

Q.3 ミルキーウェイとギャラクシーの違いは
A.3 この用語の使い方は、時代によって異なる。現代では、ミルキーウェイは、「天の川」のことを指
す固有名詞である。一方、ギャラクシー(銀河)は一般名詞である。いろいろなギャラクシーがあ
るが、ミルキーウェイはその一つ。

Q.4 ブラックホールに対応してホワイトホールはあるか
A.4 数学的にホワイトホールはあると言われているが、見つかっていない。

Q.5 宇宙の使用済みの人工衛星やロケットの回収ビジネスが言われているが、先生のご感想は   
A.5 地球の周りを回っている大量のゴミが回収できれば良いことであると思う。しかし、回っている
ゴミを地球に持ってくるにはエネルギーがそれなりの量が必要であり、ビジネスとなるのは中々難
しいと思われる。                           
                                                (文責 飯沼直躬)               
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