会員の声(2016)


◎会員の声



音楽雑感(その1)            内山 晴信

私が「組織運営」に興味を持ち出したのは学生時代の体験が大きく係わっている。

昭和40年代、レコードが結構高く、あらかじめ「レコード芸術」「Stereo」「音楽の友」などのクラシック音楽関係の雑誌を読んで、個々の演奏の特徴や収録状況(音域・音の伸び・各楽器のバランスなど)を頭に入れ「相場感」を養うことが大切なことであった。
加えて、FM放送で(NHKやFM東京)流される演奏を聴き、「そのレコードを買うかどうか」を判断していた。これは、多くの愛好家がやっていたことで、資金には限りあり「新発売されるレコードを片端から買うことは不節操」「学の無い下品な行為」と馬鹿にする風潮があった。また、この「選別過程」を通じて、「正当な論評をする評論家か否か」「企画・制作するレコード会社の真剣度合は如何に」「国内で販売権を有する日本のレコード会社のやる気度合」を検証。良いもの・悪いものを峻別する能力を養う効果もあった。

そのような時期のある夜(1970~1971年頃)、中学校時代に親に買ってもらった高性能のFMラジオをつけた。途中からであったので、曲名、指揮者やオーケストラ名は不明。

「第一ヴァイオリンの伸びやかな音と音量・音質の安定感」「地味な音域担当の第二ヴァイオリンやビオラの音もきちんと拾えている」「金管楽器も派手にどぎつくならず、伸びのある音」「全般にどっしりとしてはいるが暗い音色では無く、適度な明るさもある」「余裕を持って楽々演奏しており、相当な腕前のオーケストラ」。いったいどこだ・・・「ベルリン・フィルか」「ヴィーン・フィルか」いや違う。

「コンセルトヘボウの、ほんわか・親しみやすい音色とも異なる」「ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団や米ボストン交響楽団でも無い」「余裕綽綽の腕前といえばフィラデルフィア管弦楽団ながら、あそことも違う」「幻のオーケストラといわれ、めったに聴く機会のないレニングラード・フィルか?(ソ連の中でも洗練された楽団)」など思い巡らせている内に演奏が終了。

アナウンサーが「ただ今の曲はマーラーの交響曲第6番(当時は、あまりなじみのない曲)、ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団の演奏でお送りしました」と告げた。
私は咄嗟に「これがあのゴツゴツしたシカゴ響か?」と疑問を持つと同時に「数年前、立て直しのためにショルティが音楽監督に就任した」ことも知っていたので、「早期に立て直し・梃子入れ効果が出た」と納得。
10月会報「ショルティ」

 また、ショルティならば、当然レコード会社は英デッカ。第二次大戦でドイツの潜水艦のスクリュー音を捉える軍事技術を、戦後にレコード制作に転用。音域の広さ・音の伸び・音の分離も抜群。低音から高音まできちんと収録。メイン・テーマで掻き消され殆ど聴き取れない中音域の楽器や音量の小さな楽器の音もマルチマイク方式で収録。指揮台に上がってオーケストラを指揮している状態が再現される。

レコード業界随一の会社。
シカゴといえば、「アル・カポネなどが暗躍していたギャングの街」「中西部から放牧牛をカウボーイが運び込み、屠殺・食肉加工する街」「独墺からの移民が多くドイツ語新聞が発行されている」「現在全米第二の都市」など言われてはいたが、日本人にとって馴染みの薄い地域。全米五大オーケストラの一つではあるが、1960年前後のフリッツ・ライナー指揮のRCA録音は音域狭く、音の分離や伸びが無く録音が下手。(同じRCAでもボストン響はすっきり収録。結局シカゴ響担当録音チームが二流)。その後の常任指揮者がパッとせず低迷。
そのような状況をショルティが短期間に再建したので、「組織活性化」の実例を見た。

それ以降、「旧大陸はベルリン・フィルハーモニー、新大陸はシカゴ交響楽団(フィラデルフィア管弦楽団に代わり)」と表現力・演奏技巧で世界一二を争う実力楽団として世界中から称賛された。・・・しかし、日本では「アメリカのオーケストラ」と軽視する風潮あり・・・「組織運営とはやり方次第。大幅に悪化することもあるが大幅に改善することもある」「個々人の能力を引き出すのは指導者の役目」「人生送るならば有意義に過ごそう」など、社会人となってからも今に至るまで、私の行動指針となっている。 
                                   

<参考1> ゲオルグ・ショルティ(1912~1997年)について
                                           10月会報「ショルティ2」

オーストリー・ハンガリー帝国に生まれた。ユダヤ系であったのでナチスの迫害を避けるため、二次大戦中はスイスに亡命。戦後、ドイツ・ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場を振り出しに、フランクフルト国立歌劇場、ロンドンのコヴェント・ガーデン王
立歌劇場(いわゆる「ロイヤル・オペラ」)の音楽監督。10年以上に亘るロンドンでの活躍と1972年にドイツ国籍からイギリス国籍に変えたこともあり、エリザベス女王から「ナイト」(一代限りの貴族)の称号を受ける。1969~1991年シカゴ響の音楽監督、その後「桂冠指揮者」の名誉称号を受けた。

<参考2> 全米五大オーケストラ  設立年代順
①ニューヨーク・フィルハーモニック (1842年)
②ボストン交響楽団 (1881年)   ③シカゴ交響楽団 (1891年)
④フィラデルフィア管弦楽団 (1900年) 
⑤クリーヴランド管弦楽団 (1918年)   

(※「音楽雑感」は「その4」までを随時掲載します)
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