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学習会の要旨

7月会報周先生1

◎6月11日(土)学習会の要旨                         
  

日 時:6月11日(土) 13:30~15:30                             
場 所:東京経済大学 2号館 B301教室  
テーマ:「中国経済の現状と課題」                                          
講 師:周 牧之 先生(東京経済大学経済学部教授)
出席者:214名(会員:男性165名、女性:43名
          非会員:男性4名、女性2名)

【講演要旨】

はじめに:メインプレーヤーの交代

ここ10数年間中国経済は世界経済を引っ張ってきた(IMF統計による「世界GDP成長率に対する各国・地域の寄与度」)。世界経済の成長に対する貢献度で、中国経済が2007年にアメリカより高くなり、2008〜2009年の金融危機の影響でアメリカをはじめ先進諸国の貢献度が低下する中で、中国経済の貢献度はトップであった。当時滞在していたアメリカでの中国経済に対する関心は非常に高く、中国に対する熱い視線を目の当たりにした。

1.メガロポリス時代の到来(15年前の予測)

(1)グローバルサプライチェーンと「世界の工場化」

IT革命は本来人間しか持たなかった頭脳を機械に持たせ、モジュール(製品を構成する部品あるいは装置)生産方式を可能にした。例えば車に必要なモジュールを何処でも作れる様にしていった。IT化された機械は、頭脳化している故、途上国での工業生産のハードルを低くした。労働者の賃金の高低を争うことになった。また、作られたモジュールを使って、途上国の何処でも製品の組み立てが可能になった。途上国の工業化をもたらした。

                    7月会報上海1

(2)中国でのメガロポリス化

①中国の改革開放とリンクして、地方の広大な用地に工場を建て工業化が進んだ。同時に中国国内に今迄なかった人口移動が起きた。中国は厳格な戸籍制度で人の移動は禁止されていたが、制度と矛盾して都市化がどんどん進んでいった。

②中国政府はこの都市化に対応するためにJICA(日本国際協力事業団)の協力を得てプロジェクトチーム(周牧之先生が責任者)を作り、2000年前後に最終的にレポートをまとめた。このレポートの真髄は、「中国の都市化は避けられない」であり、「メガロポリスも形成される」ことであった。メガロポリスは沢山の大中小都市が集まる都市空間であり、例としてアメリカ東海岸のワシントンからボストン、東海道メガロポリス(東京圏、名古屋圏、近畿圏)でこれは新幹線、高速道路で繋いでいる。

レポートは中国に長江デルタ(上海含む)、珠江デルタ(香港・マカオ・深圳・広州)、北京・天津・翼(河北)の三大メガロポリスが形成されることを予測し、当時多くのシンポジウムが開かれた。日本の専門家にも多数参加して頂いた。

(3)都市化と社会構造の変革

レポートはさらに都市社会にシフトするために4つの社会改革の目標を定めた。
 ①集約社会   ②流動化社会   ③市民社会   ④持続可能な社会  

(4)農業人口と都市人口の逆転


①2007年に都市人口が農業人口を上回る、世界の都市人口でも都市人口が50%増加。

②人口1000万人都市の増加:1970年:3都市(先進都市のみ)、2014年:29都市(発展途上国
23都市=内中国6)。世界経済は低迷期であったが中国は爆発的に成長し、世界経済を牽引した。
この変化はグローバルサプライチェーンがもたらした都市化の成果である。

③労働生産性は格段に向上し、中国が日本を抜いてGDPの第2位になった。
  ⇒『ニューズウイーク』2010年2月10日号カバーストーリー「ジャパン・アズ・ナンバースリー」と題した周牧之先生とボーゲル氏
 との対談で、中国がGDPで世界第2位になった衝撃を世界に伝えた。

2.中国の経済社会の現状を可視化する指標の開発

下記の要領で「中国都市総合発展指標」を作成中。裏付けとなるデータは十分に調査された客観性・信憑性のあるものを用いて、可視化に耐えられる様にしている。

(1)可視化対象地域
 中国上位295地級市及びそれ以上の都市の経済社会環境の総合指標。
 直轄市4(北京、天津、上海、重慶)及び地級市(日本の県に相当)291の合計295。

(2)指標の作り方
 マッキンゼー元社長の横山禎徳氏の提案した3×3×3構造に総合指標。3つの大項目(環境、社会、
経済)を置き、各大項目に3つの中項目を作り、更に各中項目に3項目の小項目を作り、その小項目
に枝葉を付けた。総合評価は大項目から小項目の各項目であり、指標は133。

(3)可視化の例
既に地域別にデータを出し、地図上に優劣をプロットしている。
例えば環境ランキングでみると、気候ランキング(過ごしやすさ)、降雨量(作柄との関係)、 森林カバー率、水資源保有量(一人当たり)等。
                                      7月会報香港1

3.メガロポリス構想の検証(図表による検証説明)


(1)メガロポリスの仮説は正しく、十分な成果も上がってきた。

①3つのメガロポリスに人口が集中している。
②ここ15~30年間に中国の工業生産額は飛躍的に伸びた。伸び率の高いのは三大メガロポリス。

(2)工業化のひずみ

①輸出額(80%は工業製品)の上位30都市で、突出しているのが「長江デルタ」と「珠江デルタ」で、
両エリアは良質の工業化を進めて来たと言える
②工業化は誰でも何処でもやれるが、効率の悪いところは競争力維持のために環境対策への投資を削り、土地代を払わない、労働者の賃金を押さえるなどの無理が進んだ。
③工業化は(特定の地域に)収斂していく。質の悪い工業化は結局無理をしている。
④三大メガロポリスは輸出用のコンテナ港湾をもっている。世界の港湾取扱量上位10港のうち7港は
中国である。

(3)三大メガロポリスは小売り、医療、高等教育、文化スポーツ、科学技術、金融など多くの分野において波及力を持ち、周辺にも良い影響をもたらした。

4.社会改革の諸問題

(1)DID(人口集中地区)の人口率

DID(人口集中地域=Densely Inhabited District)は人口集中度が4,000人/ 1㎢でその
常住人口が5,000人以上の地域、DID人口率は常住人口に対するDID常住人口の百分比
東京のDID人口率は98%(23区は100%)、(衛星の分析で)中国全体では27%台。
同じ様に東海道メガロポリス:83.2%、長江デルタメガロポリス:43.2%。
 東京周辺には4,000万人近い人口。人口の集中はメリットもあればディメリットもある。人が集まっ
てくればインフラの効率も良くなり、都市生活も豊かになる。世界的に巨大都市が増えている。中国
のメガロポリスは東京と比べてまだ余裕があり、発展の可能性が大きい。

(2)自動車社会の弊害
自動車の大きな普及は2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の影響。公共交通機関の利用を嫌って自家用車が一気に増えた。モータリゼーションは都市を変貌させた。どんどん道路を作っていっても、渋滞は起きる。排気ガスの問題も大きい。

(3)農民戸籍の問題
都会で働く農民工の戸籍は農民のままで、子供の教育、医療、就職等で都市の福利を受けられないな
ど影響がいまだ大きい。現政権は引き続き問題に対処している。

(4)空気汚染の問題(図表で説明)
中国全土のPM2.5の2015年の平均分布である。データはハイテクを駆使して信憑性は高い。質の悪い工業化を進めている地区は競争力で無理しているためで、PM2.5のデータも悪い。

(5)所得格差の問題
ジニ係数:日本は0.32、中国で0.4超(0.4を超えると社会が不安定になると言われる)。習政権は5年以内に貧困を解消すると言っている。財政的には可能なのでやる意思があれば出来る。

5.日中間の課題と提言

(1)2014年IMFの購買力平価でGDPをみると中国が世界第1位となり日本の3.7倍になった。

(2)日本への外国人観光客は年間2,000万人で半分が台湾・香港・マカオ・大陸を含む中国系。
爆買いで日本経済に貢献している。引き続き観光客は増えていく。単なる観光から多目的性を求める滞在へと代わってきており、その点で満足させられるのは東京が世界で一番である。

(3)少子化で日本の各大学は学生の確保を心配している。もっとアジア、東南アジアの学生を積極的に受け入れることを考えたらよい。

(4)中日問題で2005年「北京・東京フォーラム」を立ち上げた。歴史問題で中日間のチャンネルが無い時期に、中日双方の政界、財界、マスメディアのそれぞれトップに参加して貰い、年1回交互に会合をもつことにした。第1次安倍内閣が発足の時、日中関係の回復のきっかけとなった。

(5)これからの日本の経済
これからはライフスタイルを支える生活文化産業が期待できる。2010年に100名程のミッションを
組んで中国で交流会を行ったところ大盛況であった。生活文化産業の輸出に大きな可能性がある。

(6)四大メガロポリスの協力体制
将来の東アジアを発展させるために、中国の三大メガロポリスに東海道を含めた四大メガロポリスの
協働、共生が必要である。            (文責:小笠原正文)               

                        7月会報周先生講聴3
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