6月学習会要旨

加藤一彦先生2

◎6月13日(土)学習会の要旨                           
 日時:6月13日(土) 13:30~15:30                             
 場所:東京経済大学 2号館 B301教室  
 テーマ:「憲法と国会―衆議院議員選挙制度改革の視座―」                                          
 講師:加藤 一彦先生(東京経済大学現代法学部教授)
 出席者:156名(会員:男性113名、女性:38名
          非会員:男性4名、女性1名)

【講演レジュメ】

憲法と国会ーー衆議院議員選挙制度改革の視座ーー
  
一、はじめに
・衆議院議員選挙制度の復習
・選挙の意味の再確認
・政治改革後の政治世界の変化

                                1衆議院議員選挙

二、衆議院議員選挙制度の歴史的展開
(1)旧憲法/貴衆両院制度(旧憲法33条)

・最初の衆議院議員選挙制度(1889年)
→定数300/小選挙区制。選挙権:25歳以上の男子+直接国税15円以上
           被選挙権:30歳以上。同じ
15円の意味:現在の金額で年俸億単位の収入。全国民の1.13%。
↓ 東京府の例)有権者数:5,715人(人口比 0.35%)
緩やかに改正されながら、男子普通選挙制度の導入へ

・男子普通選挙制度の確立(1925年)
定数466/中選挙区制。納税資格要件の廃止。
大正デモクラシィーの成果。
負の側面:①臣民の「義勇奉公の誠」と「国家国防の責」を尽くすため、「政治的責任の自覚及び普及」の徹底化。
     ②治安維持法の成立/社会主義者弾圧法としての役割
「第1条 国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ又ハ情ヲ知リテ之ニ加入シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」。

1927年(金融恐慌)1929年(世界恐慌)以降、日本政治の劣化。
・1932年/5.15事件犬養首相暗殺、「憲政の常道」の崩壊。
・1935年/天皇機関説事件(美濃部達吉教授への攻撃)。
・1936年/2.26事件。陸軍皇道派青年将校のクーデタ。
・1941年/太平洋戦争へ。
→日本政治の死亡

(2)敗戦後の改革
1945年8月14日:ポツダム宣言受諾
同10号「日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ」。
・マッカーサー五大改革指令=①女性の解放、②労働者の団結権の保障、③教育の民主化、④秘密警察の廃止、⑤経済の民主化。

1945年12月17日/女性参政権の確立。翌年選挙実施。
1947年5月3日/日本国憲法施行
1947年3月21日/衆議院議員選挙法に基づく選挙実施。
       →戦後長く続く選挙制度の原型形成
 中選挙区制、普通選挙制度。
→55年体制の確立:憲法改正なしの自民党一党優位性の確立
         
(3)90年代の政治改革

1988年6月18日『朝日新聞』のスクープ記事
→リクルート事件/竹下内閣:昭和から平成へ。
竹下→宇野/第8次選挙制度審議会の設置→海部→宮沢内閣
1992年/東京佐川急便事件
1993年8月6日/細川連立政権誕生
1994年/政治改革関連4法成立:細川+河野トップ会談/土井議長の斡旋
!日本政治の変質化にとって決定的意味を持つ。

・中選挙区制の廃止/中選挙区悪玉論
・小選挙区比例代表並立制の導入
 有権者の選挙行為を首相選択と同一視する発想
→ウエスト・ミンスターモデル(イギリス型)
その後の展開は、当初の予定通り、オセロゲーム的状況

三、衆議院議員選挙制度の改革の必要性

(1)現在の衆議院議員選挙制度
総定数475:小選挙区/295、比例代表180(公選法4条1項)
小選挙区:1選挙区1名当選(相対多数)
比例代表:11ブロック制/拘束名簿式(但し、全員同順位という場合もある)。
ブロック定数:北海道8人、東北14人、北関東20人、南関東22人、東京都17人、北陸信越11人、東海21人、近畿29人、中国11人、四国6人、九州21人。
 
重複立候補は可能:小選挙区落選者が比例代表で当選しうる。
前回の例)沖縄の4選挙区:自民公認候補落選。
         比例復活/いわゆる「ゾンビ議員」

(2)改革の現在

小選挙区における1票の較差(×格差)訴訟
通説:較差は1対2以内。
現在、13選挙区が2倍以上(都市部)
                          日本国憲法1

裁判所の立場
・最高裁判所1976年判決/最重要の判例
①較差が存在すること、②合理的期間内に是正をしないこと
→この場合に限り「違憲判決」。但し、行訴法31条の援用「事情判決の法理」
              いわゆる「違憲有効判決」。

・2014年12月の衆議院議員選挙の判断
「0増5減」への評価
17件の高等裁判所の判断:違憲判決1、違憲状態判決12件、合憲判決4件。
年内に最高裁判所判決が出される予定/違憲状態判決か?
(3)衆議院自体の努力

衆議院選挙制度調査会の設置(2014年6月)
現在、改革案を模索中。各党の意見はまとまらず。おそらく失敗する。
では、どうするか?
→最高裁判所が「違憲無効判決」を下さない限り、改革は進まない。

国会議事堂2

四、小結ーー宿題としてーー
・憲法41条の規範意味:「全国民の代表」の捉え方。
 国会議員は、何を代表するのか?

・議会制民主主義が正常に機能するための条件とは何か。

・参議院の改革も同時並行的に考えよう。

・有権者18歳引き下げ法案、現在審議中。
→約240万人が新たに有権者に加わる。
 →高等学校の教科内容の変更を伴うはずである。
→20代の投票行動

【ブックリスト】
石川真澄/山口二郎『戦後政治史〔第3版〕』(岩波新書、2010年)
山口二郎『いまを生きるための政治学』(岩波書店、2013年)
宮本太郎・山口二郎『日本の政治を変える』(岩波書店、2015年)
後藤謙次『平成政治史1-3』(岩波書店、2014年/15年)
加藤一彦『議会政治の憲法学』(日本評論社、2009年)

                加藤一彦先生聴講3
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