学習会要旨

◎ 9月19日(土)学習会の要旨                         
 岩城先生4
 
 日 時:9月19日(土) 13:30~15:30                             
 場 所:東京経済大学 2号館 B301教室  
 テーマ:「案外知らない“終の棲家さがし”の真実」                                          
 講 師:岩城 隆就
(有料老人ホーム代表、 社会福祉士・介護支援専門員)
 出席者:134名(会員:男性86名、女性:33名 
  非会員:男性7名、女性8名)

【講演要旨】

 私は、練馬区の豊島園の近くにあります「シルバーヴィラ向山(こうやま)」と「アプランドル向山」の二つの施設を運営しております。現在都内には約700の有料老人ホームがありますが、私どもは開業後34年、3番目に旧い草分け的存在です。入居者募集の広告はこれまで行ったことがなく、口コミだけで満室を続けております。これまでに7組の親子二代のご利用もありますし、将来の入居を申込中のお子様もいらっしゃいます。ご家族が「自分も入りたい」と感じていただけるのはありがたいことと感じています。

 さて、老人ホームというと皆さまはどれも「終の棲家」と思われるかもしれませんが、実は「終の棲家」は案外少なく一歩前、二歩前の施設が多いものです。でも謳い文句は「終の棲家」です。ここがややこしいところです。今日お集まりの皆さまは、会場に続くあの坂道を登って来られる体力があるわけですから、私から申し上げれば、皆さまには「終の棲家」はまだ存在すらしていないことになります。ここを理解され、あとで「臍(ほぞ)を噛む」ことがないように、今日はお話しさせていただきます。

平均余命と償却期間・・・人生は思うほど短くない
 わが国の高齢者は3千万人を超え、その内、要介護の支援が必要な方は550万人というのが現状です。実は、平均寿命がこの65年間に約20歳以上も伸びているのです。
平均寿命
 ※1950年から65年間で女性は約24年男性は約20年伸びています。、 
 
 一方、健康寿命は2010年の場合、女性は73.62歳、男性は70.62歳と、平均寿命とは9~13年の差があり、これが病気や要介護の期間であるのです。結構長く、厄介です。
1950年当時は定年が55歳でしたから「老後」は概して短いものでした。その頃は、食事が摂れず水分だけになってしまうと、4週間ほどで逝ってしまわれたものです。

 平均寿命の他に平均余命というものがあります(厚労省の「簡易生命表」として公開されています)。
これは当該年齢でどれだけ更に生きているかの平均値を意味しています。0歳の人の平均余命が平均寿命です。75歳の平均余命は、女性で15.4年、男性で11.7年となります。これは現在75歳の女性100人の内、半数の50人が90歳(15年後)を超えることを意味しています。更に日本人は現在も一日5時間寿命が伸びています。これは5年で1歳寿命が伸びていることを意味します。人生は本当に長いのです。

 一方、有料老人ホームの入居一時金の償却期間はほとんどの施設で5~6年しかありません(入居一時金を設定する都内440施設の内、75歳入居での償却期間6年以下が83%に達します)。これは平均余命と償却期間の設定が大きく乖離しているわけで、人生の長さに対応した有料老人ホームが大変少ないことを意味します。然しながら、どの有料老人ホームも「終身」契約と謳っているため「亡くなるまでずっと面倒を看てもらえるなら、返戻金の有無は大きな問題ではない」と考えてしまいがちなのです。
ここが盲点であり「臍を噛む」ところです。

 基本的に「入居一時金」=「前払家賃」となります。従いまして、償却期間を過ぎると、その入居者は「お客様」でなく「居候」と見做されかねません。償却期間を越えた入居者A様を退出させ、新規B様に入れ替えることが出来れば、再び「入居一時金」を手にできます。その施設の採算がギリギリであれば、その誘惑は抗し難くなります。具体的には、「当ホームの介護能力を超えた」、「他のお客様に危害を加えた」、などの理由を挙げられます。実際に追い出され、当ホームに再入居されたお客様がいらっしゃいます。
 今は採算に余裕があるとしても、運営期間が長くなるにしたがい、必然的に「居候」が増えて行きますので、結果は同じです。「居候」が3割を超えるようになれば、施設運営そのものが困難になります。従い、施設維持のためには追い出さざる得なくなるのです。つまり、こうした有料老人ホームでの契約条件は、およそ経済的合理性に欠けていることになります。ご自身の平均余命よりも短い償却期間での入居契約には、こうしたリスクを十分ご留意ください。
 因みに、平均余命をいずれも上回る償却期間を契約条件としている施設は、全国でも当社以外に例を見ておりません。まことに残念なことですが・・・
                                      老人ホーム10

人生は往(い)って復(かえ)ってくるもの
 新生児は寝返りも打てません、所謂“寝たきり”状態です。食事も最初は“流動食(母乳)”、やがて“きざみ食(離乳食)”、そしてやっと“普通食”となります。1歳頃から歩くようになりますが、心許ないので移動時は“車椅子(乳母車)”でした。また、最初の2年ぐらいは“オムツ”生活でした。これが成長です。老化とはこの逆コースです。
皆さまは、今の状態がズーと続くと思いがちですが、そうはなりません。往った道は必ず復るものです。その意味で私たちは“0歳”に向かって下り坂を歩んでいるのです。

 では、皆さまは“0歳”に対して今は何歳でしょうか? これは知力でなく体力の話です。“中学生”ですか? “小学生”ですか?
いま“中学生”と思われた方は、これから“小学生”~“幼稚園児”~“保育園児”~“乳児”の時代を順番に迎えることになります。それぞれの“通学”期間は人それぞれですが、必ず通過します。“中学生”で中学校に通うあなたが“幼稚園児”時代となった時、今のまま中学校に通えるでしょうか。恐らく無理です。机・イスの大きさ、階段の踏込も違います。
いま“中学生”以上の皆さまが老人ホームを選ばれるとき、どうしても今のご自分に相応しい施設つまり“中学校”を選んでしまいがちです。それは「今良いホーム」ですが、「明日良いホーム」とはならないのです。

 8ⅿほど先のトイレを想像してください。今の歩幅なら10歩程度で行けますが、これが10~20㎝の歩幅となったら何歩で辿り着けるでしょうか? やっと辿り着いた時には、恐らく用は済んでいることでしょう。つまりその時代には8ⅿ先のトイレは存在しないのと同義となります。全く違う次元の世界になります。歩幅とともに生活圏そのものが変わることを認識しなければいけません。
私の考えでは、「終の棲家」とは学齢期前の方が住まう場所です。「シルバーヴィラ向山」は「終の棲家」ですが、「アプランドル向山」は“小学生”の施設、つまり「終の棲家」の一歩手前と考えています。
老人ホーム2

良い施設の見分け方
 ここまで、施設選びには“今後の人生の長さvs償却期間”そして“歩幅縮小がもたらす生活圏の変化”を考慮する必要をお話しましたが、それ以外の観点における施設の良し悪しの見分けは結構難しいものです。それはご自身の判断基準が出来ていないからです。比較検討のための“基準点”を持つには最低でも10施設以上見て歩く必要があります。でも現実にはなかなかそうも行きませんので、簡単なポイントをお話しします。

 まず、施設長の人柄を見てください。施設の雰囲気は施設長で決まります。金正恩が施設長の場合と、マザーテレサが施設長の場合を想像いただければ判り易いと思います。
 次に、お客さまの顔色や目の輝きを見て下さい。目線が下であれば、その施設では自己表現を躊躇わせているのだと分かります。抑圧的でお奨めできません。更に、お客様ご家族の話を聞ければ、なお良いでしょう。
なお、紹介業者は報酬の良い施設から奨めると承知ください。すべての紹介業者は、ある一社を除き、施設側から成功報酬の形で報酬を受け取ります。(注:当社はそうした業者と契約しておりませんので、紹介業者のリストには当社は含まれていません)

男と女の違い・・・男性のための安全保障政策
この仕事を始めてから気付いたのですが、
①ご夫婦入居の場合、男性はシッカリ、女性は要介護のケースが多い。
②男性が要介護等で単独入居の場合、奥様はご自宅に居られるケースが多い。
③女性が要介護等で単独入居の場合、独身か未亡人であるケースがほとんど。

 これはどうした訳かといろいろ考えました。考え抜いた末の結論は、男性は奥様を「所有物」視する傾向にあり、女性は夫を「白馬の騎士」と見る傾向にあることでした。男性は奥様がたとえ認知症になられても手放すことが出来ず他人に委ねません。一方、女性は優生な子孫を残すと云う命題を負っているため「白馬の騎士」に憧れるわけです。この「白馬」が気付いたら「ロバ」になっていたとしたら、女性は「あらっ」となるのですね。つまり「愛」ではなく「生理」の問題です。

 「終の棲家」がまだまだずっと先の皆さまには、これからも長いご夫婦二人の生活が続きます。これまでは、外で働く夫を妻が支えてきました。この関係を定年後も続けて良い訳がありません。男性の多くは「炊事・家事」を女性に依存しています。自立の要件にはこの生活技術も含まれます。つまり多くの男性は、対外的には自立して見えますが、人間としては依存状態にあると云えます。この依存状態は安全保障政策上かなり問題です。この微妙なバランスが崩れるとパニックになりかねません。こうしたストレスは認知症に直結します。今日から炊事を始めましょう。冷蔵庫に何が残っていたかを思い出し、その素材から何を作るかを考えるのは、かなり創造的な作業です。認知症予防にはうってつけなのです。

                     岩城先生講演4

【質疑応答】

質問1 老人ホームの入居者同士の人間関係は難しいと聞いていますが、どうなんでしょうか。

答え: 先ず、他人のことが気なるというのは相当レベルが高いと思います。認知度が下がってくると他人が気になりません。人間関係には相性があり、能力の差もありますが、基本的には一つの社会を作りますので、どのような社会を作るかがその施設で変わります。これは実学の世界でそのために私どもがいます。人間関係がうまく廻るようにいたしますし、マネジメントとして捉えています。趣味とかを見ながら相性の良さそうな組み合わせをするよう頑張って足を合わせていきます。

質問2 償却期間の説明がありました。自分の余命と償却期間の線を捜すのは容易ではないと思っています。施設検討の際に具体的な目安としての金額でもあれば教えてください。

答え: 値段には大きな幅があります。私のところは都内では下から25%位で30万円を切ります。高いところでは100万円を超えています(月当たり)。私のところより廉いのは問題と思います。私どものような個人経営とは違って企業の場合は、利益率を上げる事も一つの使命にしていて高額になります。この業界は6割を人件費が占めており労働集約型です。自助努力をするしかないのかなとは思いますが、人件費への工夫と、お世話に代わり得る、人に優しい技術革新も必要とは思っています。
(文責:渡辺 義廣)

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